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SG会田アンダースロー(グローバル)今年は昨年の逆か?

シンカー:グローバルに中央銀行の金融政策の引き締めは景気状況と比較し遅れ始めている。政治不安が継続する中で中央銀行は「忍耐強い」姿勢を維持している。目先は、米中の貿易交渉とブレグジットの進展に注意を払う必要がある。そして、今年のFEDの利上げも困難な状況にある。ある程度の景気拡大と物価上昇の加速が確認できなければ、金融政策の引き締めを加速できないようだ。昨年には各国の金利上昇が株式市場のバリュエーション調整による下落につながったが、今年は逆で政治不安が和らげば低金利の継続が株式市場を押し上げる可能性もある。中央銀行が「忍耐強く」いることができる根拠となっている物価上昇の弱さも、実質所得の増加を通して、消費活動が予想以上に強くなることにつながる可能性もあるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・フォーカスの解説

●BREXIT 今後の主要日程

2月25日、労働党党首のコ―ビン氏が労働党は英国のEU残留を問う2度目の国民投票を支持すると発表した。以前、コ―ビン氏はEUとの関税同盟にとどまるという形でのブレグジットを唱え、国民投票には反対していた。先週は労働党のBREXIT方針に反対する議員の離党、今週のコ―ビン氏の方針転換、さらにメイ首相も離脱期限の延長に対して柔軟な姿勢を見せ始めるなど、離脱期限を目前にして新たな動きが出ているが、今後重要になる可能性のある日程を挙げる。

・2月27日: 英国の離脱交渉プロセスについての動議の採決

2月26日までにEUとバックストップ案修正の合意に至っていなければ、議員たちの修正案について27日に再び採決が行われる。COOPER(労働党)案のように離脱期限を延長するための案が採決される可能性が高い。

・3月12日 :MEANINGFUL VOTE(EUとの離脱協定案の可否についての議会投票)

メイ首相はEUと離脱協定修正についての交渉をつづけており、3月12日までにメイ首相の離脱再交渉案についてのMEANINGFUL VOTEを行うとしている。労働党が唱えている2度目の国民投票が議題になる可能性がある。

・3月13日 :NO DEAL BREXITに賛成かを問う議会投票

MEANINGFULVOTEでメイ首相の離脱再交渉案が可決されなれけば、メイ首相は議員たちにNO DEAL BREXITに賛成かを問う。

・3月14日:離脱期限延長についての議会投票

議会にBREXITの期限延長の可否が問われる。メイ首相は延長期限は最長でも6月末までと発言している。

・3月21日、22日: EU首脳会議

それまでにEUと離脱期限延長にいたっていない場合は、期限を延長する最後の機会になるかもしれない。

グローバル・レポートの要約

●米国経済(2/18):FRBバランスシート…無意味どころか非常に興味深い

FRBのバランスシート正常化は、市場の見込みよりも早く実現する可能性がある。また市場や経済全体にとって、現時点での見方よりも遥かに興味深いものとなり得る。タイミングは2019年中頃:FRBは今後数カ月で、保有米国債の削減を終了するとみられる。これによって、2019年後半にはバランスシート縮小が減速する可能性がある。2020年初めには、FRBが米国債の大幅な買い手に戻ることもあり得る。FRBはバランスシート正常化の基盤をすでに据えており、1月FOMCに続き、市場へ準備預金を潤沢に供給することを確認した。

米国債購入にスイッチを切替え:取組みは比較的緩やかに進むだろうが、変化は大きくなると弊社は見込んでいる。FRBは2018年に米国債保有を2,140億ドル削減、2019年も同様の結果になりそうだが、2020-21年までに年間2,000-2,500億ドルの米国債買い越しになるとみられる。

●米国経済(2/15):FRB…2019年中は利上げを見送るとみられる

FRB金融政策の弊社見通しを修正する。従来は2019年中に2回の25BP利上げがあるとみていたが、それを撤回する。引続き「忍耐強く」なるというFRB自身のメッセージに加え、よく引用される様々な(景気への)逆風とインフレが緩やかなことを背景に、FRBは2019年中には様子見を続けると見込まれる。また弊社は、今年後半には米国景気が減速するとみており、こうした環境下でFRBが利上げを実施するとは考えられない。

●米国経済(2/14):米国と中国の貿易紛争、休戦が続く見通し

弊社では、中国からの輸入品に対する米国の追加関税引上げが延期される、という見方を強めている。建設的な話合いが続いているが、合意内容は(枠組みだけに関連するものではあるが)依然としてつかみどころがない。交渉の長期化に備えるべきだろう。

●英国経済(2/26):下院議会の最新勢力図

英国の下院では、保守党議員が3名、労働党議員が8名離脱して新しく独立グループを形成した後に、政府与党の実質的な過半数(野党との議席差)は既に、わずか8議席と危機的なほど小さくなっている。こうした時期に、議会の勢力図に関する相反した様々な推定が出ており、筆者は混乱している(読者諸氏が同じ問題に直面しているかどうかは存じ上げないが)。今回のレポートでは、実質過半数の確保に政府が必要とする議席数を計算するための、筆者が考える非常にシンプルな原則(と計算結果)を示したい。

●英国経済(2/26):ブレグジットに関する今後の日程

3月29日のブレグジット期日が見える中、英国主要政党(保守・労働両党)の穏健的な議員の多くがノーディール(合意無き離脱)リスクを警戒するようになり、緊張感が高まっている。ただ、これでメイ首相が悩まされ、ノーディールの可能性を否定するには至っていない様だ。議員にはブレグジットまでに残された日で、メイ首相の気持ちを変えるか、首相をEU条約第50条(が定める期日)の延期に向かわせる機会が何回かある。主な日程を以下に示す。

●英国経済(2/1):ブレグジット メイ首相は苦境を脱していない

英国のメイ首相は、自身が反対していたブレグジット修正案が否決され、 (アイルランド国境のバックストップを代替案で置換える)ブレイディ氏が提示した修正案は可決されたことで、安心感や心強さを覚えるだろう。メイ首相はブリュッセルに向かい、離脱協定を修正あるいは破棄するよう、EU27カ国を説得すると見込まれる。今回が弊社の最終分析となるが、従来と同じく、何らかの解決策が見つかると考えている。EU27カ国が譲歩して、英国のDUP(民主統一党)や保守党のハードブレグジット派も同意するとみられるためだ。だが前途はまだまだ遠い。弊社は、英国がEU基本条約第50条(ブレグジット期日)の延期を遠くないうちに要請して、EU27カ国がそれに同意すると見込んでいる。

●欧州経済(2/25):ユーロ圏GDP:「持ち越し効果」は弱いが「モメンタム」は改善へ

数週間前に発表したユーロ圏GDP成長率の最新弊社予測では(参照)、2019年を従来の1.7%(11月の世界経済見通し:GEOで示した)から1.3%に下方修正した。とはいえこの下方修正の大半は、昨年(特に年後半)みられたモメンタム低下の「持ち越し効果」を考慮した結果だ。この点に関して弊社にはご質問が相次いでおり、「持ち越し効果」のコンセプトを再確認して、2019年ユーロ圏景気見通しを理解する上でそれが重要なことを明確にしようと決めた。

重要ポイントは、2019年通年のGDP成長率は2018年通年を下回るとみられるが、四半期ベースの前期比GDP成長率は昨年より今年の方が力強くなる、と弊社では見込んでいることだ。言い換えると、弊社はニュースフローの改善を見込んでいる。2月PMIが上昇していたことは(2018年8月以降で初めて)は、トレンド上向きを示す最初の兆しかも知れない。

●欧州経済(2/25):ECB:非伝統的な政策の後は、信用チャネルへの注力が必要

ECBドラギ総裁の任期終了が近づいているが、ユーロ圏景気は、総裁就任当時に比べて遥かに足元が安定している。EMU(経済通貨同盟)の最適な制度的枠組み(が何であるか)、政府債務の持続性、低生産性に対する懸念は残るだろうが、こうした問題のために、ECBはほとんど何も出来ない。その代わりに、ECBが検討を重ねることになる時期が控えている一方で、ECBは、各国政府により大きな責任を持たせるような政策空間の再構築に取組んでいる。

ECBには解決すべき課題が残る。現在の景気減速は、政策正常化への取組みを停滞させる一方、(不均衡だと明らかになっている)信用チャネルや政策波及チャネルにより注力することを求めている。バランスシートの損傷が比較的軽く、銀行を通じた資金調達がユーロ圏を支配していることから、ECBは非常に不確実な状況下での企業投資を支えるために、金融仲介機能を改善することが必要になるだろう。このように、望ましい金融状況や、インフレや政策の正常化が続くという信頼感を支えるための追加アクションが求められている。状況が悪化すれば、住宅ローンに使えるTLTROを通じて、消費者信頼感を下支えする策が検討される可能性もある。

●スペイン経済(2/19):早期総選挙…ハングパーラメントの再現に

スペインのサンチェス首相は、4月28日に早期(前倒し)総選挙を実施すると発表した。直近の世論調査は、(主要3党の勢力が均等に近づくが)再びハングパーラメントになると示している。右派PP(国民党)と中道右派シウダダノスの少数政権が、VOXの支援と合わせて(アンダルシア州議会と同じく)過半数を占めるが、安定政権にならないことは明らかだ。政治的に不安定な時期が長期化することと、再選挙実施の少なくとも一方が、明確な可能性として考えられる。とはいえ、スペインは経済、財政、金融の面でのファンダメンタルズが現在は大きく改善している。そうした政治的に不安定な状況となっても、グローバル経済の下方リスク要因が現実化しない限り、市場が懸念する原因にはならないだろう。

●債券市場(2/25):新しい見方、新たな予測

最近の欧州中央銀行(ECB)高官の発言は、「3月7日の定例理事会で金利のフォワード・ガイダンスに文言の修正が加えられ、それを受けて貸し出し条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)再開の決定が下される可能性が高い」という弊社エコノミストの見方をおおむね確認する内容であった。ユーロ圏の長期金利は現在、どの尺度から見ても低い水準にある。しかし、その低い金利が上昇するためには、向こう1年間のECBの利上げに対する市場の見方が変わらなければならない。弊社エコノミストがECBの金利見通しを修正したのを受けて(2019年2月14日号「EUROPEAN THEMES:ECB NEEDS TO FOCUS ON CREDIT CHANNEL IN ERA BEYOND NON-STANDARD MEASURES」を参照)、我々はドイツ10年国債利回りの年末目標水準を1.00%から0.60%に引き下げた。当面は引き続きキャリー・トレードに人気が集まるだろう。現在のような低い利回りでは、デュレーションを延ばすよりも、各国債のスプレッドを確保するほうが望ましい。また、(オプションやスワップションを活用した)各種のコンディショナル戦略にも投資妙味があるとみている。

●債券市場(2/17):踏ん張りどころ

経済指標の低迷、中央銀行の緩和的な政策運営、インフレ圧力の沈静化、持続的なリスク要因が、ドイツ国債の利回りを低水準に維持している。しかし、現在の水準では、もはやデュレーションを延ばす価値が見いだせないため、ユーロ圏の準中核国や周縁国の国債で利回りを確保したい。政局絡みでスペイン国債のスプレッドが拡大した場合、そこを好機と捉えて買い向かうことを推奨する。

ユーロ金利上昇のポテンシャルと比べてガンマ・ボラティリティーが低い現在の状態は、2015年前半の状況とよく似ている。そのため、オプションやスワップションを活用したコンディショナル・トレードに投資妙味が感じられる。ユーロ2年-5年-10年の金利支払いポジション、5年テナーのペイヤー・スワップション買いVS 2年および10年テナーのペイヤー・スワップション売り、ドイツ国債先物コール・オプション買いVSレシーバー・スワップション売りなど、コンベクシティーに着目した様々なトレードを検討していく。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司