富裕層・投資家の「今と先」を伝えるキュレーションサイト

自社ビルで資金調達「セールス&リースバック」の実例

「セールス&リースバック(S&L)」をご存知でしょうか?これは自社ビルなどの不動産を売却した上でリース契約を結ぶ資金調達方法のことを表します。この「セールス&リースバック」を活用し、ROA(総資産経常利益率)向上などの財務体質の強化や企業価値の向上を図る動きが活発化しています。今回は、その「セールス&リースバック」の仕組みやメリットについて詳しく見ていきましょう。

自社ビルの他、工場や社宅、物流施設なども対象に

office
(画像=marvent/Shutterstock.com)

「セールス&リースバック」の対象となる企業不動産は、オフィスビル(本社ビル含む)のほか、工場や研究開発施設、社宅、商業施設、物流施設などの幅広い不動産です。中には底地の取引なども含まれます。リースバックした売主が長期利用する可能性が高いので、本社ビルや工場のような汎用性の低い物件も売却可能であることが特徴です。一方で、売主が退去した場合に備えて、立地などテナント誘致のしやすさや他用途への転用可能性など、不動産の汎用性についても当然評価されます。
「セールス&リースバック」方式での売却先は、リース会社やJ-REIT、大手デベロッパー、鉄道会社などが多くなっています。一時金を預託する先として十分な信用力や財務力を持ち、不動産の管理能力も有する企業であることが大切だからです。

「セールス&リースバック」のメリット

資金調達目的で自社ビルを売却した場合、移転先を検討するための時間的コストや移転コストがかかります。
しかし、「セールス&リースバック」を活用すれば、同じオフィスビルを継続利用しつつ、自社ビルから賃貸ビルへと利用形態を変更することができるのです。つまり、実務的な影響はほとんど受けずに資金調達が可能であるということです。
そのため、売却代金として一時的にまとまった資金が入り、資金繰りが楽になるだけでなく、資産のスリム化によってROAが改善し、金融機関の融資審査で評価が上がるといったメリットもあります。
また、「セールス&リースバック」の場合、毎月一定額のリース代金支払いのみとなるため、経費負担が標準化し、経営の見通しが立てやすくなります。毎年変更される固定資産税や減価償却などに追われることもなくなり、経理上の作業も軽減されるのです。

ソニー、2013年に大崎の自社ビルと米国の本社ビルを「セールス&リースバック」で売却

2013年には、ソニーが大崎の自社ビルと米国本社のビルを「セールス&リースバック」で売却しました。大崎駅前の「ソニーシティ大崎」の売り先は、日本最大のJ-REIT(不動産投資信託)日本ビルファンド投資法人と、国内の機関投資家1社。売却額は1,111億円でした。一方、米国本社が入居するニューヨーク・マンハッタンのオフィスビルは約11億ドルで売却しています。
大崎駅前の自社ビルは、売却のわずか2年前となる2011年に完成したばかりの地上25階建て地下2階の物件で、テレビ事業や研究開発部門など5,000人が入居していましたが、ソニーはこの取引によって関連費を差し引いた1,100億円を手にしました。
ソニーは売却当時、5年間のリースバック契約を結び、継続利用することになりました。大規模なリストラなどで経営再建を進める同社は、「セールス&リースバック」で得た売却益を手元資金として、経営再建を進める方針だったとみられます。

経営再建中のシャープは、「セールス&リースバック」物件を再度買戻し

一方で、台湾企業の傘下に入り経営再建に取り組んでいるシャープが、売却したはずの自社ビルを再度買い取ったことで注目を集めました。
2015年、シャープは経営危機を受けて大阪の自社ビル2件を売却。ところが翌2016年、NTT都市開発に売却し「セールス&リースバック」でリース契約を結んでいたビルを138億円で再び買い戻しました。損失を出してまで短期間で買い戻した背景には、「セールス&リースバック」の条件が悪く経済合理性がなかったとも考えられますが、2017年には野村不動産と共同で、IoT(モノのインターネット)を活用したスマートタウンを開発し、オフィスビルやマンションに建て替えると表明。オフィスビルにはシャープの技術部門などが入居し、中核拠点となるといいます。

自社ビルを所有していれば、「セールス&リースバック」によってオフィス移転をせずとも不動産を活用して手元資金を得るという手段を選ぶことも可能です。ただ、長期的に見ると自社ビルに比べてリース料が割高になる可能性があります。資金繰りに余裕がある企業は、資産を売却せずに継続利用したほうがメリットは大きいでしょう。

(提供:自社ビルのススメ)