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米中貿易戦争:アジアの勝者と敗者は?

モトリーフール香港支局、2019年5月23日投稿記事より

昨年から継続されていた米中の貿易協議は、5月上旬に米国が追加の制裁関税を発表したことで一転し、決裂状態に陥りました。さらに、米国が中国の通信機器大手ファーウェイに対する排除政策を打ち出したことで、事態はさらに悪化しています。米中貿易戦争が長引く場合、アジア市場へはどのような影響を与えるのでしょうか?

米中貿易戦争
(画像=Getty Images)

アジア経済への影響

アジアは世界で最も開放的な経済圏の一つであり、米中貿易戦争はアジアの金融市場に衝撃を与えるでしょう。なお、状況は厳しいものの、貿易戦争の恩恵を受ける企業、産業、地域もあるとみられます。

米国株式市場の上昇基調が崩れていないことから、米国が貿易戦争に勝利しつつあるとの見方があります。一方、中国株式市場は貿易戦争の影響を受けており、上海総合株式指数は4月中旬以降大きく下落しています。

また、中国で生産を行っている海外企業はサプライチェーンの見直しを余儀なくされており、おそらくタイ、ベトナム、インドネシアなどに生産を移転するでしょう。

勝者と敗者

エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの報告によれば、製造企業が中国から撤退するとき、アジアが最大の受益者になります。報告では、以下のように言及しています。

「我々は今後数カ月間で貿易戦争がさらにエスカレートすると予想しており、最終的には、携帯電話、ノートパソコン、その他の電子製品、アパレルを含む最終消費財が影響を受けるでしょう。」

さらに、東南アジア諸国の多くには自由貿易協定の強力なネットワークがあり、こういった変化に対応しやすくなっています。マレーシア、シンガポール、ベトナムなどの国々を含む貿易協定であるアジア太平洋地域における経済連携協定(CPTPP)はこの例になります。

米中貿易戦争の恩恵を享受するのは?

トランプ大統領はこのほど2,000億ドル相当の中国製品への追加関税を発表し、米中貿易戦争を激化させました。米国通商代表部は、昨年7月に発表された初期のリストから300近くの製品を削除しましたが、中国の5,745製品は引き続き打撃を受けるでしょう。

この貿易戦争により、2つのチャネルを通じた潜在的利益が考えられます。短期的なものが「輸入代替」、中期的なものが「生産移転」です。これら2つのチャネルは、さまざまなアジア諸国に利益をもたらすでしょう。

米国と中国の企業の輸入代替の最大受益者になる可能性が高いのはマレーシアです。それに続くのは日本、パキスタン、タイ、フィリピンです。

輸入代替および生産移転の恩恵

アジア諸国のうち、インド、バングラデシュ、韓国は輸入代替から利益を得る可能性が最も低いように思われます。一方、マレーシアは電子集積回路、通信機器、液化天然ガス、日本は自動車、パキスタンは綿糸、タイは自動データ処理、フィリピンは電子集積回路関連で輸入代替の恩恵を受けるでしょう。

米中貿易戦争が長期化すれば、制裁関税を逃れるために、多国籍企業は製造拠点の分散や、さらには製造プロセス全体の中国国外への移転を検討するでしょう。この動向においては、中期的にベトナムが最も恩恵を受け、マレーシア、シンガポール、インド、タイが続くとみられます。

以上のプラスの代替効果はあるものの、多くのアジア企業は中国に部品等を供給しているため、中国製品に対する制裁関税は間接的にはアジア諸国にマイナスの影響をもたらすと考えられます。米中貿易戦争が本格化した場合、アジア地域全体としては敗者となる可能性があります。

今後の展望

おそらく、米中貿易戦争は、少なくとも今後数年にわたって展開されるとみられます。世界規模の企業は、こういった状況に向けて様々な対策を進めていく必要があります。なお、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによると、貿易戦争におけるアジアの勝者が明らかになるのはおそらく2020年以降でしょう。(提供:The Motley Fool Japan


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