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物理好きの文系高校生がハマった新書シリーズの気になる新刊【書評】

日経平均株価が過去最高値の3万8,915円87銭をつけたのは、平成が始まった年の終わり。1989年12月のことだ。今年45歳になる筆者は、ちょうど高校1年生だった。

バブルの絶頂(とその後の崩壊)を報道で見ながら、別世界・異次元の話のように感じていたためか、経済や金融にまったく興味がない――むしろ嫌悪感さえ覚えていた――学生だった。当時はまっていたのは小説を読むこと。大学も当然、文学部に進むものと考えていた。

ただそんな高校生活の中で文学以外に関心があったのが、なぜか物理だった。SFアニメの影響か相対性理論や量子論に関心を持ち、雑誌『Newton』や今はなき『Quark』を愛読するかたわら、『10歳からの相対性理論―アインシュタインがひらいた道』『10歳からの量子論―現代物理をつくった巨人たち』『10歳からのクォーク入門―究極の粒子をつきとめた巨人たち』などを次々と読んだ。これらを著した都築卓司氏(故人。1928-2002年)が当時、横浜市立大学で教鞭を取っておられたので、筆者も同大文理学部への進学が頭をかすめた記憶もある。

都築氏のこれらの著作は、本読みなら誰もが知る講談社の「ブルーバックス」シリーズだ。

これは岩波新書(38年)、中公新書(62年創刊)に続いて1963年に創刊された講談社の科学新書レーベル。キャッチコピーは「科学をあなたのポケットに」。自然科学全般の話題を一般読者向けに解説・啓蒙しており、2018年時点で点数は2000点を超えている。ちなみに都築先生の著書は(上に挙げたものではないが)歴代売り上げトップ10に3冊入っているそうだ(2017年2月現在)。

そのブルーバックスシリーズも、社会人になってからは数年に1~2冊読む程度になっていた。

しかし2019年1月、興味を引く新刊が出た。それが今回紹介する『ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ』(岡嶋裕史著)である。

ブロックチェーンがなぜ改ざんできないと言われているか説明できますか?

ブロックチェーン,書評
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「ブロックチェーンってよく聞くけど、仮想通貨の何か技術なんでしょ?」--。

こんな認識の人は意外と少なくないだろう。こういう相手に向かって、どれくらいの人が自信を持って「ブロックチェーンっていうのはね……」と説明できるだろうか。

最近、ブロックチェーンについて記事を見ない日はない。間違いなくAIなどとともに今最も注目されている技術であり、テーマの一つだろう。しかし、なかなか説明するのは難しい。ごく簡単にすると、「仮想通貨にも使われている、特定の管理者のいない、改ざんが不可能と考えられている、誰でも参加できるデータベースのようなもので、取引結果を分散していくつかのところで保存するので記録が失われる心配がない」といったところだろうか。

しかしここで「なんで改ざんできない?」などと聞かれると、途端に説明のハードルは上がってしまう。これには「ハッシュ」の理解が欠かせないが、暗号や圧縮ついても(比較して理解を深めるために)知っておく必要がある。

今回紹介した『ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ』は、科学を取り扱った新書シリーズではあるが、文系読者にも読みやすく、技術面の理解も深めやすい入門に最適な一冊だ。「ハッシュ」についてもかなりの紙幅を割いて説明されており、共通鍵・公開鍵暗号とともにその基本が理解できるだろう。

またハッシュや暗号といった技術に関連する説明だけでなく、ブロックチェーンの課題や仮想通貨以外の分野への転用の可能性についても論じられている。

それはブロックチェーンに向いてません」と上司に言えるようになる

まえがきでは、本書の目的を「ブロックチェーンについて知ること」とし、読者の対象を入門者と想定。読み終わったときの到達目標を「ブロックチェーンに関する学校の課題、会社の業務を振られたときに、とりあえずちゃんと受け答えができること」と明確に掲げられている。

筆者の知人にも、大手IT企業勤務で、会社からブロックチェーンを活用したビジネスを考えるよう指示されている人がいる。これもまえがきに、「簡単な仕様書が書けたり、『それはブロックチェーンに向いてません」と断ることができる」ようになると示唆されているだけに、本書はそうしたビジネスパーソンにもうってつけだ。

本書にはまた「相互不信が実現する新しいセキュリティ」という副題がつけられている。そして終章の題は「最初の理念が骨抜きにされると、普及が始まる」となっている。

このところ「ブロックチェーン」は、仮想通貨に限らない、あらゆる分野での活用が期待される、明るい未来の技術といったイメージで語られているように思える。

しかし情報ネットワークや情報セキュリティが専門という筆者は、その本質を評価しながらも(専門家だからこそ)礼賛はせず、淡々と、専門家でない私たちが理解すべきことを提示してくれている。(濱田 優・ZUU online編集長)