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注目の書籍レビュー『82年生まれ、キム・ジヨン』

「社会現象」と呼ばれ、異例の大ヒットとなる作品はときどきある。この小説は、まさにそれだ。書店で平積みされているのを見かけた方も多いかもしれないが、日本で、外国文学、とくにアジア圏の文学がこれほど注目を集める事態は類がない。原書が刊行された韓国では100万部の売れ行きを突破した(ちなみに、韓国の全人口はおよそ5千万人だ)。本作は世界17カ国・地域での翻訳出版も決定し、韓国では映画化されるという。これほど支持を集める理由は、本を開けば明らかである。女として生まれ落ちたキム・ジヨン氏は、一見、それなりに幸せな人生を歩んでいるように見える。けれどそこには、ふつうの日常にうずもれた、小さな理不尽がたくさんある。女性であるということだけを理由にした理不尽が。読者は自分の体験や、言葉にならなかった気持ちを思い出し、怒りに心をざわつかせながら読み進めずにいられなくなる。昔と比べれば、もちろん女性は生きやすくなった。けれど、進学、就職、結婚、育児といったさまざまなライフステージを見渡してみてほしい。わたしたちの社会には、まだまだ男女が同じようには幸せになれない慣習や構造が残っている。韓国では、そうしたつらい思いを自分の娘にはさせたくないと考えた父親ら、多くの男性たちも本書を手に取っているという。この本を300冊買って、手紙とともにすべての国会議員に贈った男性国会議員もいるそうだ。次世代がより幸せに生きることができるように、性別にかかわらず、たくさんの方がご一読くださることを心から願う。