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次の震源地は仮想通貨なのか? ~「下落」の先にある「暗号資産」までの道のり~

年末のボーナス時期にある今、投資を始めてみる、もしくは投資額を増やそうという考えをお持ちの読者も少なくないだろう。そうした中で手頃なものとしては投資信託や個別株がポピュラーである。他方で、いわゆる「億り人」を目指していよいよ仮想通貨に手を出してみようという方もいるのではないか。

仮想通貨,原田武夫
(画像=警察庁)

仮想通貨価格が下落(仮想通貨安/円高)していることもそれを助長している面がある。しかし、このまま下落し続けてしまうのでは意味が無い。そこで本稿では仮想通貨マーケットが年末年始にどのような動きをする可能性があるのか、今後の仮想通貨を考えるに当たって今後のマクロ動向に焦点を当てることとする。

仮想通貨というと、これまでの法定通貨、さらには中央銀行制度からの脱却という観点から盛んに導入が進んできた。暗号やブロックチェーンと呼ばれる新たな技術が開発された結果、「安全」な通貨であるとされ、銀行口座を用いた決済よりも高速かつ安価な決済方法としてマネーが集まってきた。しかし、そのように人気を博した結果、欠点であるボラティリティーの増大を招いている。

ビットコインやイーサリアムは11月上旬より低迷を続けている。前者の下落は「ハード・フォーク」の結果生まれた「ビットコインキャッシュ」へマネーが流れたためであるという議論がある。後者の下落は、(1)ビットコイン・マーケットの下落に連動したこと、(2)ICO件数が減少すること(*ICOを行う場合のプラットフォームの大半がイーサリアム・ベースとなっているために、ICO件数がイーサリアム需要と連動しているという)、(3)11月に予定されていたイーサリアムの「ハード・フォーク」が延期となったこと、という3つが複合的に関与したためであると言われている。3つ目に掲げた「ハード・フォーク」については来月中旬に新プラットフォームである「コンスタンティノープル」の公開が生じる旨、イーサリアム開発者による最終会議で合意に至ったとしており、新たな転換点として1月中旬がセットアップされたこととなる。波乱は未だ続くということだ。

ではこのままこの下落は続くのか。弊研究所がアライアンス・パートナーのサポートを受けて行っている定量分析を踏まえると、興味深い展開可能性があることが分かる。

まずビットコインに触れてみよう。ビットコインで興味深いのが、対日本円なのか対米ドルなのかに応じてその下落具合が異なるのだ。かつては対日本円取引が半数近くを占めていたものの、今や対米ドルの取引量がそのうちのかなりを占める状況にある。こうした現状を考えると、海外ないし海外取引所由来でのショックが生じ我が国のビットコイン・マーケットに波及するというシナリオが想定できる。

イーサリアム価格もビットコインと同様の動きを見せる可能性がある。他方で興味深いのが、リップルである。リップルは韓国ウォン建が多いことが知られている。これらを踏まえても、海外発のショックが生じるというシナリオは決して否定できないのである。

このように種類に応じて仮想通貨マーケットの動きは様々であるが、これが金融当局による規制動向が符合していることに気付く。ビットコインは最も取引量が多いこともあり、ボラティリティーが高い。つまり投資商品としての選好が高いということを意味する。そのスマートコントラクトのために単なる仮想通貨以上の地位を有するイーサリアムではあるが、これもまたその有用性が故に投機的な動きを行っている。

他方リップルは決済の円滑化を主要な目的として開発されたものであり、取引量が相対的に少ないという事情も無視し得ないものの、価格は前述の2者に比較すると相対的に価値が安定している。

17日(月)、金融庁は仮想通貨を正式に「暗号資産(Crypto Assets)」と呼称することを決定した。金融庁が行っているのは、投機先としての「仮想通貨」と決済用途としての「仮想通貨」を分離するというオペレーションである。日銀の雨宮副総裁は我が国における法定仮想通貨の導入を機会がある毎に否定しているものの、同じG20参加者である金融庁はこのように、より“使いやすい”「暗号資産」の導入を着々と推進しているのである。

実は国際通貨基金(IMF)も今年6月に、仮想通貨に対する金融政策の在り方を考えるという文脈ではあるものの、中央銀行が法定デジタル通貨を導入するというシナリオを提示しているのだ。IMFは、国際的な金融規制の現場ではG20旗下の金融安定理事会(FSB)において事務局として参画している。本来の組織目標からしても、中央銀行が法定仮想通貨を導入する可能性を思案せざるを得ない立場にいるのは明らかだ。しかし、その報告書を読む限り、その導入に対して、中立的というよりはむしろ肯定的なスタンスなのである。

現在、仮想通貨投資に携わるのは個人投資家が多い。その中には一獲千金を夢見て過大なレバレッジを掛けた取引を行う向きも少なくないだろう。しかし、米国では仮想通貨ETFや仮想通貨先物の上場に向けた準備がますます進んでいる。ゴールドマン・サックスやブラック・ロックといった超大手資産運用会社も仮想通貨マーケットへの参入を睨んでいる。確実に仮想通貨マーケットのボラティリティーは減少する方向性へ誘導されていると言える。

その先にあるのは、今の電子マネーと類似するように「暗号資産」が取引される世界である。その目的のためには、過度に投機マネーが流入する通貨はその価値が安定化=下落する方向に行かざるを得ない。なぜならば価値が下落すれば、含み損が発生するためにキャピタル・ゲインを狙う向きによる仮想通貨を退蔵する傾向が強まる一方で、新規参加者を睨むことができるために利用者を分散化することが可能となるからである。

ブロックチェーンはたとえば宮崎県綾町で農作物の品質管理用に試験導入が終了していることが表すように、もはや生活の一角を占めつつある。私たちが紙幣やコインを使わなくなる日もまた、徐々に近づきつつある。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

原田武夫 (はらだ・たけお)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所代表取締役 (CEO)。社会活動家。
1993年東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省入省。アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に2005年3月自主退職。2007年4月同研究所を設立登記、代表取締役に就任。多数の国際会議にパネリストとして招かれる。2017年5月よりICC(国際商業会議所) G20 CEO Advisory Groupメンバー。「Pax Japonica」(Lid Publishing)など日独英で著書・翻訳書多数。