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急成長中のMagical Tripが目指すインバウンド革命。“ガイドファースト”の姿勢で未経験者でも案内役に

未経験者でも地元の人がガイドに。訪日旅行者向けローカルツアーが急拡大 ――日本各地でガイドツアーを企画販売しているMagical Tripですが、これはもともとどのような経緯でスタートしたサービスなのでしょうか。 発端となったのは2018年1月に、通訳案内士法が改正されたことでした。それまでは「通訳案内士」という国家資格を持つ人でなければ、有償でガイドを請け負うことは禁じられていたのですが、その規制が緩和されることになったのをきっかけにサービスをスタートしています。 当初は訪日外国人を対象に、「Magical Tripバーホッピングツアー」というブランドのナイトツアーからスタートしました。つい4カ月前までは、わずか5ツアーしか商品がありませんでしたが、現在は東京、大阪、京都、広島の4エリアで、寺社仏閣めぐりやサイクリングなど、約30種類のツアーを展開しています。これからも顧客ニーズを基にツアーエリアや種類を拡大していきます。 ――それぞれのツアーのガイドは、すべて現地の人材を採用されているのですか? そうですね、各地で外国人旅行者を案内することに興味を持つ方々を募って、ガイドをお願いしています。他に本業を持っている社会人や学生の方が多く、一定レベル以上の語学力があり、地元の魅力を積極的に発信していきたい、あるいは海外からの観光客の皆さんと交流を持ちたいという意欲を持った方々が中心です。そして最大の特徴は、ほとんどの方が通訳案内士資格を保有していない未経験者である点です。 なお、現在は4エリア合計で120人以上のMagical Tripガイドがアクティブに活動していますが、ここ1年だけでも1000人以上の応募がありました。この中から面接やOJTなどの選考過程を経て、合格した方にガイドとして活躍してもらっています。 資格を持っていない人がガイドをするということで、当初は同業の方から品質などに懐疑的な目を向けられたりもしましたが、選考やトレーニングのプロセスを独自に磨くことで、お客様から非常に高い評価をいただけています。TripAdvisorやMagical Tripのサイトにはこの1年だけでも合計で1000件を超えるレビューが集まり、そのうちの95%が最高評価の★5でした。 ――Magical Tripのサイトを拝見していると、ガイドさんを動画で紹介したり、ツアー料金に含まれるものが明瞭であったり、日本に不慣れな外国人観光客にとって、非常に優しい構成になっているのがわかります。 そこはとくに配慮している点です。例えば日本に着いたばかりの観光客からは、「どのように日本の夜を楽しめばいいのかわからない」という声が非常に多いんです。居酒屋で出てくるお通しひとつをとっても、日本人にとっては当たり前の文化でも、彼らにしてみればいきなり注文していないものが出てきて戸惑ってしまうわけです。 そんな中、日本の夜の過ごし方を知る手段として、来日した初日や2日目にMagical Tripのツアーに参加いただくケースも多いです。わかりやすいサイト構成にこだわっているからこそ、日本観光の手始めに我々のツアーが選ばれているのだと思います。 急成長するインバウントツアー市場とその課題 ――現在、とくに人気が高いツアーは何でしょう? 各地のナイトツアーは我々にとってフラッグシップ的な商品になっています。例えば東京では歌舞伎町や思い出横丁などの居酒屋やバーをまわるツアーが、毎日2~3ツアー開催されています。 また、両国で相撲部屋の朝稽古を見学するツアーや、秋葉原をまわるウォーキングツアーなども最近は人気が高いですね。 ――そうしたツアーの企画は、どのようにプランニングされているのでしょうか。 まず重視しているのは「場所」で、秋葉原にしても渋谷にしても、訪日外国人の皆さんが行きたいと思っている街に着目します。こうしたツアーはあくまで“旅中”の商品なので、旅行者がその街でどんな体験をしたいのか、どんなことに興味があるのかを深掘りして、切り口を検討していきます。 旅中領域のプレイヤーとしては、我々のツアーがあるからこそ旅行者がいっそうその地域にお金を落とす、という状況を作っていけるとベストだと考えています。 ――これから2020年にかけて、いっそう多くの外国人観光客が来日すると予想されます。サービス提供側としては、まだまだ市場の拡大に期待が持てるのでは? 実際にMagical Tripはここ数カ月の間、毎月1.5~2倍に近いペースで予約件数が伸びています。おそらく市場全体も大きく伸びているのではないでしょうか。 一方で、この市場は慢性的な人手不足がネックになっていると感じます。つまり、需要があったとしても、ガイドとして活躍できる人材が足りていないんですね。Magical Tripでは、いまのところ大都市圏に関しては多くの熱意を持った方に手を挙げていただいていますが、今後さらにエリアを広げていったとき、地方都市で果たしてどれだけのガイドを確保できるかは、現時点で未知数と言わざるを得ません。 我々としては、自分が暮らす地域のポテンシャルに誇りを持ち、その魅力を発信したいという熱意のある方に、どんどんお手伝いいただきたいと思っていますが、それでも日常会話レベルの英語力は不可欠です。Magical Tripがこれまでに培ってきた選考やトレーニングのノウハウで、どこまでMagical Triガイドの輪を拡げていけるか、今後さらに挑戦していきたいと思います。 ベンチャーならではの柔軟性が強みに ――こうしてお話を聞いていると、単なる訪日外国人に向けたツアー企画販売事業というよりも、まず各地のガイドありきのマッチングサービスであることに、Magical Tripの本質があるように感じます。 そうですね。もちろんカスタマーを重視することは基本中の基本ですが、我々はあくまで「ガイドファースト」の考え方で取り組んでいます。 同じツアーであっても、参加者の満足度はガイドさん次第で良くも悪くも大きく変わります。だからこそ我々は、ガイドの皆さんが楽しく旅行者との交流や案内に集中できる環境をつくることが、何よりも大切だと考えています。 これは今後さらに力を入れていきたいポイントで、例えば近々、ツアーの進行をサポートするガイド専用アプリの提供を開始する予定です。現在すでにテスト運用を始めており、ガイドの方々からの評判は上々です。 現時点ですでに、旅行業界未経験者でも、通訳案内士の資格を持っていなくても、ガイドとして活動できることを私たちは証明できたと思います。今後さらにMagical Tripガイドの仕事を良いものにしていき、我々がひとつのロールモデルとなって全国でさらに多くの方々がガイドとして活動できるようになれば嬉しいですね。もちろん、豊富な経験と素晴らしい知識を持つ通訳案内士の方々とも協働の機会を拡げていきたいと思っています。 ――逆にカスタマー側を見た場合、現在、最も利用率が高いのはどの地域ですか? 一番多いのはアメリカのユーザーで、次いでオーストラリアです。現状、訪日外国人の約85%がアジア圏とされていますが、我々は残る15%の欧米圏から先にアプローチしたかたちです。結果論ですが、おかげで落ち着いて仕組みづくりを進められた面があります。 今年はいよいよ中国をはじめとするアジア圏まで対象を広げ、より多くの観光客にリーチできればと考えています。すでに中国最大手のキャリアであるチャイナモバイルインターナショナルとの提携も発表しています。 ――どうしてもインバウンド周りにつきまとう、2020年以降の市場予測についてはどうお考えでしょうか。 それについてはあまり心配していません。オリンピックが開催される2020年にひとつの大きな山が来ることは間違いありませんが、そこで旅行・観光事業者が世界に向けて日本の魅力を発信した成果によって、2021年以降も右肩上がりのトレンドは当面続いていくと考えています。 また、Magical Tripのモデルを、日本だけでなく世界中で展開していく計画もあります。実は我々は、自分たちをインバウンド事業者とは位置付けていません。グローバルなガイドツアーサプライヤーになることが当面の目標です。 そのためにいまは、日本国内でのサービス展開を通じてあらゆるシステムの効率化や最適化を行いつつ、海外展開に向けてインターナショナルなチームづくりを進めていかなければなりません。Magical Trip運営チームはすでにメンバーの半分が外国籍なので、その土壌はできています。 ――『Magical Trip』の急成長の理由は、ずばりどこにあると感じていますか? 先行投資として、あえてリスクを取りにいった点でしょうか。こうしたローカルツアー市場はまだまだ黎明期にあり、大きな成功モデルがありません。これは自分たちでやってみて痛感したことですが、オペレーションは非常に煩雑かつ個別的ですし、訪日旅行者を対象としたマーケティングも難易度が高いです。 通訳案内士法改正に合わせて、一時期は多くの事業者が同様の取り組みを始めましたが、現在は大手をはじめ、多くの企業が撤退ないしはトーンダウンしてしまった印象です。しかし我々の場合、ベンチャーならではの柔軟性とリスクテイクの姿勢をもって、ビジネスの仕組みづくりに専念してきました。 例えばオペレーションの最適化によって、一部のツアーはスタートの3時間前まで予約が可能という柔軟な運営を実現したり、たとえ参加者がたった1人であってもツアーを催行したりします。正直、参加者が1~2名であればツアー自体は赤字になることもあります。しかし、赤字になるリスクを取ってでもサービス提供機会を無駄にしないことで、サービスの評価は着実に積み上がりますし、経験の浅いガイドの方々に経験値がたまっていきます。 何よりこうして成長を続けられているのは、ガイドの皆さんがこれを単なる仕事と捉えず、自分たちの街の魅力を発信することや、海外の方との交流に大きな意義を見出しているからでしょう。我々はMagical Tripを通じて、そうした人々にこれまで得られなかった機会を創り出しているという、社会的な意義を感じています。 今後も訪日外国人の皆さんに楽しんでもらうことはもちろん、ガイドの皆さんにさらなる活躍の場を提供できればと思っています。