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地方銀行の相次ぐ合併|変わっていく銀行の役割とは

ここ数年、合併のニュースが相次ぐ地方銀行。銀行合併というニュースを聞くと、「自分の貯金は大丈夫なのか」、「地域経済に影響はないのか」と心配になる方も多いでしょう。地方銀行はなぜ合併をするのでしょうか。そして、利用者である私達にはどのような備えが必要なのでしょうか。

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2019.5.23

ふくおかFGと十八銀行の統合計画が公正取引委員会に認められる

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2018年8月、九州地方をインパクトのあるニュースが駆け巡りました。
「ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)と十八銀行(長崎市)の経営統合が公正取引委員会に認められる」。
両社が経営統合の計画を発表したのが2016年2月。実に2年半もの間、宙に浮いた形となっていた経営統合計画が前に進むことになりました。
2019年4月1日に両社は経営統合され、計画では2020年4月に、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)と十八銀行が合併されます。
ふくおかフィナンシャルグループは、福岡銀行と熊本ファミリー銀行、親和銀行の3行の経営統合によって設立された持株会社ですので、この10年あまりで九州地方の銀行業界の様相は様変わりしたと言って良いでしょう。
また、ほかにもここ数年だけで、新潟県内最大の地銀の第四銀行(新潟市)と県内シェア2位の北越銀行(長岡市)の合弁会社が設立したり(合併は2021年)、常陽銀行(水戸市)と足利銀行(宇都宮市)の持株会社である足利ホールディングスが経営統合したりと地方銀行の経営統合や合併はもはや珍しい話ではなくなった感があります。
この傾向は、人口減少に悩む地方都市の銀行ならではのものでは決してありません。2016年4月には横浜銀行(横浜市)と東日本銀行(東京都)が経営統合し、コンコルディア・フィナンシャルグループが発足しました。
横浜銀行は総資産16兆円を超える、地方銀行の中ではトップクラスに規模の大きな銀行として知られている銀行で、この経営統合は驚きを持って伝えられました。
ここ数年の流れからは、規模の大小に限らず、地方銀行は大きな転換点に差し掛かっていると読み取ることができます。

地方銀行の経営統合や合併が相次ぐ理由

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それではなぜ、ここ数年で特に地方銀行の経営統合や合併が進んできたのでしょうか。
大きく3つの理由が考えられます。
1つ目の理由としては、ゆうちょ銀行の預金限度額の引き上げにあります。
300万円、500万円、700万円、1,000万円、1,300万円、2,600万円。
この数字はゆうちょ銀行の預金限度額の推移です(民営化前は郵便貯金)。
1988年4月までは郵便貯金の預け入れ限度額は300万円でした。その後、段階的に引き上げられて、2016年4月に1,300万円位引き上げられ、2019年4月から一気にそれまでの倍の2,600万円が預入限度額になりました。
実に30年あまりで、預入限度額は300万円から2,600万円に引き上げられたわけです。
ゆうちょ銀行は、全国津々浦々に支店を持ち、多くのコンビニATMでキャッシュカードを使うことができます。預金限度額が引き上げられれば、地域の地方銀行にわざわざ預けなくてもゆうちょ銀行だけで事足りるわけです。
加えて、ゆうちょ銀行は民営化したとはいえ、大株主は実質的に国です。万が一の破綻のリスクも、地方銀行よりずっと低いでしょう。地方銀行の預金を解約してゆうちょ銀行へという構図は想像に難くありません。
2つ目の大きな理由は、日銀のマイナス金利政策の影響によるものです。
2016年1月、大きなニュースが金融業界を駆け巡りました。日銀のマイナス金利政策です。
それまで銀行は資産を日銀の当座預金に預けているだけで、0.1%の金利を得ることができました。0.1%と聞くとわずかな金額と思うかもしれませんが、たとえば仮に銀行が1兆円を日銀に預けた場合、預けておくだけで年間10億円の収入が得られていたわけです。これがマイナス金利になると預けておくだけでお金が取られてしまうのです。日銀のマイナス金利政策の恩恵に預かった企業や業界があることは否定しませんが、こと銀行、特に地方銀行のように元々の体力がない銀行には大きな痛手となりました。
3つ目の理由が地方の人口減少です。東京近郊などの都市部では人口が増えている地域も少なくありませんが、地方の多くは人口減少に歯止めが効かない状況です。人口が減るということは、経済規模も縮小し新たに貸付が必要な人も、お金を預けたい人もその額も減ってしまいます。銀行の主なビジネスモデルは、お金を預けてもらって、そのお金を企業などに貸し付けて金利で儲けるというものがありますが、人口減少社会ではそのビジネスモデルが通用しなくなってしまうのです。
先ほど経営統合の例として新潟県内第1位の第四銀行と第2位の北越銀行を挙げましたが、両者は新潟県内で長年しのぎを削っていました。
新潟県の人口は2007年には240万人あまりを数えたのに対して、2019年3月には220万人あまりにまで減少しています。将来的には早々に200万人を切るという予測も出ています。その状況で両行が取った手段が経営統合、合併という道です。これからさらに少なくなるパイを奪い合うよりも、ひとつになるという道を選んだわけです。

大手銀行も生き残りへ規模縮小の道を模索

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ここまで見てきたように、地方銀行の相次ぐ経営統合や合併には、「なんとかして難曲を乗り切りたい」という生き残りへの最終手段だったということがわかります。
しかし、それは地方銀行だけではありません。
2018年11月、三菱UFJ銀行と三井住友銀行の相互のATMの手数料無料化を発表しました。預金者の利便性の向上といった側面もありますが、将来的にATMシステムを統合して、両者のATMの維持費の抑制につなげたいという狙いが透けて見えます。
また、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行のメガバンク3行は、いずれも無人店舗の計画を発表しています。特に三菱UFJ銀行は2023年度までに全国に500あまりある支店のうち70~100店舗を店員がいない「セルフ型店舗」に切り替える目標を発表しています。これもコスト削減が大きな理由でしょう。

変わりゆく銀行の役割

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1994年、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは「銀行は将来、なくなる」と言いました。当時は一笑に付す反応が多かったと記憶していますが、2019年現在、この発言を笑う人はどれほどいるでしょうか。
ただし、銀行そのものがなくなるとは考えにくいのも事実です。テクノロジーの発達とともに、確かに銀行の窓口やATMに出向く機会は少なくなりましたが、単純にお金を預けておきたい方、資産運用のプロのアドバイスを受けたい方、最適な金融商品を知りたいという方はいなくなることはないでしょう。
ただ、銀行の形はこれまでより細分化すると考えられています。資産運用が得意な銀行、金融商品が豊富な銀行、法人向けのサービスに特化した銀行など、銀行もより専門性が重視されるでしょう。私達利用者も、激動の時代をより上手く生き抜いていくためには、これまで以上に銀行選びが重要なファクターになるのではないでしょうか。
ミノワタケノブ

ミノワタケノブ

新聞記者、雑誌編集者を経て現在、フリーランスのライター&編集者。取材、執筆ジャンルは多岐に渡るが、ここ数年は経済ニュースがメイン。過去に東京電力株で大きな痛手を被った経験あり。

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