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北欧の小国エストニアが、『電子国家』になるまで。デジタル化の担当者「ここまで20年以上かかった」

e-Residency プログラム 広報責任者 アルノー・カステグネさん

役所で住民票の発行を待ちながら、「このご時世、どうして行政だけいつまで経っても紙なんだ」と感じたことはないだろうか。

住民票の発行、保険の申請、投票など、日本の行政サービスは、ほとんどがデジタル化されていない。

行政(Government)にテクノロジー(Technology)を導入する「GovTech」という取り組みも出てきているが、日本ではまだまだ普及していない。

対照的に、いち早く行政にテクノロジーを導入した国がある。北欧の小国、エストニアだ。人口約132万人で長崎県程度、面積は大体九州ほどの国でフィンランドの南に位置する。

■「電子国家エストニア」とは?

エストニアは1991年にソ連から独立して以降、独自の政策を貫き、国としてデジタル化を推し進めた。

その結果、現在では確定申告や国政選挙の投票もネット上で完結し、ほとんどの住民はデータ化された個人情報が入ったIDカードを持つ。身分証明証や運転免許証、さらに健康保険証などが、このカード1枚で一元管理されているのだ。

行政サービスだけではなく銀行などの民間サービスにも利用され、IDカードはエストニアで生活する上で必需品となっている。

電子化サービスは、国内だけでなく国外向けにも広がっている。

エストニアの国民や居住者でなくても、オンライン登録すれば国内の一部のサービスを受けられる「e-Residency(電子居住権)」を2014年に開始した。

登録者はエストニアでの法人登記や口座開設などが容易になるため、主に起業家やフリーランサーがビジネス目的で使っている。

利用者は世界的には5万人を超え、日本からは、安倍首相を含む2500人が登録している。

■電子化で「誰も除外されてはならない」

今や「電子国家」とも呼ばれるエストニアだが、e-Residencyの広報責任者、アルノー・カステグネさんは「常に上手くいっていた訳ではない」と語る。

e-Residency プログラム 広報責任者 アルノー・カステグネさん

ソ連による占領時代を含め、エストニアは「教育制度とエンジニアリングのレベルは知られていた」という。

1991年の独立後、政府として「デジタルな社会と政府を作る」という大きな決断をする。背景には、インターネットの盛り上がりと、高コストの政府を運営する力がなかったことがあった。

「ここまで来るのに20年以上かかっている。常に上手くいっていた訳ではない。経済危機にも直面したし、完璧ではなかった」と振り返る。

電子化を進める上で、「誰も除外されてはならないことが重要だった」という。

そのために、「最初は国民をインターネットに接続させるところから始まった。インターネットが普及してから次の施策に進んだ」と明かす。

エストニアは20年以上の期間をかけて、納税やIDカードの導入から、投票制度、e-Residencyに至るまで、順を追って進めてきたのだ。

最後にカステグネさんは、国民に電子化を受け入れてもらうために必要なこととして、「ニーズに合うものでなければならない。ニーズに合えば、少しずつ受け入れてくれる」と話した。