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分散型アプリ全図–2019年は分散型アプリの一年に!?金融やゲーム以外も続々

Bitcoinの誕生から10年、ブロックチェーンは仮想通貨ネットワークの基盤として機能するだけでなく、分散型アプリケーションのプラットフォームとしても利用されている。ブロックチェーン上で稼働する分散型アプリケーションとは何か。また、どのようなアプリケーションがどのブロックチェーン上に存在し、利用されているのか。従来型の中央集権的なアプリケーションと何が違い、どんなメリットがあるのか。今後の展望も含めて解説する。

分散型アプリケーションとは

分散型アプリ,2019年
(写真= MUFG Innovation Hub編集部)

私たちが日々利用しているインターネット上のアプリケーションの多くは中央集権的なアプリケーションだ。例えばFacebookでは、運営の主体にFacebook, Inc.があり、その中央集権的なサーバー環境上でサービスが稼働している。Facebookと言えば、8,000万人以上のユーザーデータが不正利用されていたとして、CEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグ氏を対象にした米下院の公聴会が開かれたことは記憶に新しい。巨大プラットフォームを操る1人のCEOに、強い権力が集まってしまったという事実に、世界が動揺したのである。

その一方で、中央集権的な組織がない、またはその影響力が少ない「分散型アプリケーション」が誕生している。分散型アプリケーションと言えば、古くはP2Pの音楽共有サービスNapsterなどがあったが、ここでは、この数年注目を集めるブロックチェーン上で稼働するプログラム(スマートコントラクト)として実装された分散型アプリケーションを意味するものとする。

分散型アプリケーションは、複数のサーバーから構成される分散型のネットワークであり、ブロックチェーン上で運用されるため、アプリケーション自体も分散型または分散傾向が強くなる。「分散傾向が強くなる」としたのは、プログラムはブロックチェーン上で実行され、アプリケーションのデータもブロックチェーン上に残るものの、ウェブインターフェースを中央集権的なサーバーが提供していることから、完全な分散型とは言えないアプリケーションも存在するからだ。

分散型アプリケーションの特徴として、単一障害点がないこと、それに関連してアプリケーションを一元的に管理する者がいないため意図してシステムを止められる者もいないこと、ブロックチェーン上で発行されるトークンと密接に結びついていることが挙げられる。パブリックチェーン上のアプリケーションでは、ネットワークの処理能力などの制約によるスケーラビリティーの問題も浮き彫りになり、プラットフォームレベル、アプリケーションレベルで改善が進められている。2017年末の仮想通貨バブルのさなか、子猫を育てるゲームCryptoKittiesがEthereumブロックチェーン上でリリースされ、ネットワークを大きく圧迫したことなどが背景にある。

分散型アプリケーションプラットフォームとしてのブロックチェーン

分散型アプリケーションを動かすことのできるプラットフォームとして最も有名なのは、このタイプのプラットフォームの先駆けであるEthereumだ。Ethereumはヴィタリック・ブテリンによって2013年に考案され、2015年のリリース以来、現在まで開発が続けられている。コミュニティーの規模が大きく、長らくアプリケーションプラットフォームとして、またICO(イニシャル・コイン・オファリング)でも利用されてきた。例えば、ERC20・ERC223・ERC721といった、アプリケーション内で使うことが想定されるトークンの標準が確立され、OpenZeppelinといった定評のあるライブラリも提供されている。一方で、スケーラビリティーなどの課題が残る。また、ブロックチェーンへの書き込みを伴うスマートコントラクトの実行には手数料が必要だ。CryptoKittiesのような初期の分散型アプリケーションでは単純にユーザーに負担を求めたことから、場面ごとにウォレットを開いて支払いが必要になり、ゲームの体験としては不自然さが残った。

Ethereumが抱える処理能力の問題を解消するようなプラットフォームも出てきている。ダニエル・ラリマー氏が開発した、様々なソーシャルアプリケーションが稼働するSteemや、同氏がその次に開発に取り組んだEOSIOでは、同氏が分散型取引所BitSharesの時代から開発に取り組んできたDPoS(Delegated Proof-of-Stake)と呼ばれるアルゴリズムが合意形成に用いられ、ブロックタイムの短縮や手数料の無料化が図られている。ただしPoW(プルーフ・オブ・ワーク)のEthereumに比べ、スケーラビリティー、セキュリティー、分散度合いの面で課題が指摘されることもあり、アプリケーションごとに要件を考慮して最適なプラットフォームを選ぶ必要がある。EOSIOは2018年に稼働した新しいプラットフォームだが、既に多くのアプリケーションが存在する。

この他に、中国版Ethereumとも呼ばれるNEO、Ethereum上で誕生し後に独自のプラットフォームとなったTronなども分散型アプリケーションのためのプラットフォームとしておさえておきたい。

続いてブロックチェーン上でどのような分散型アプリケーションが稼働しているのか見てみよう。

人気の分散型アプリケーションは?

分散型アプリケーションの動向を知る際に役に立つウェブサイトがある。Ethereum、EOSIO、TRON上のアプリケーションについてはDappRadderが、Steemの上のアプリケーションも含めるとState of the ÐAppsが各アプリケーションの利用者数、トランザクション量といった統計情報を公開している。

DappRadder
State of the ÐApps

以前は分散型アプリケーションというと、分散型の仮想通貨取引所、ギャンブルに関するものが主流であったが、2017年の仮想通貨バブルの最中にリリースされたCryptoKittiesは、現在主流のコレクタブルと呼ばれるゲーム内のアイテム収集要素があるブロックチェーンゲームの火付け役となり、代替不可能なトークンの標準ERC721が広く知られるきっかけともなった。

分散型のゲームとしては、double jump.tokyoによる日本発のMy Crypto HeroesがEthereum上の分散型アプリケーションのランキングで上位、時には1位になることに注目しておきたい。ゲームとして細部へのこだわりがあることに加え、Ethereum上のゲームでありつつEOSIO用のサイドチェーンLoomNetworkを採用し、自然なゲーム体験を実現している。また、収集とバトルを組み合わせたBlockchain CutiesはEthereum、EOSIO、Tronという3つのブロックチェーンを利用したマルチブロックチェーンの分散型ゲームだ。

従来の分散型アプリケーションの主流分野にゲームが加わった状態だが、これ以外のアプリケーションも出てきている。ソーシャルブロックチェーンを標榜し、コミュニティーの形成やユーザーへの報酬付与を目指すSteem上では、2016年、最初のアプリケーションとしてソーシャルメディアSteemitがリリースされた。Steemitから流入したユーザーやSteemitで形成されたコミュニティーを起点に、分散型のクラウドファンディングプラットフォームFundition、オープンソースプロジェクトを支援するUtopianなど、他のブロックチェーン上では見られないソーシャル系の分散型アプリケーションがSteem上に誕生している。

2018年にリリースされSteem上で最もトランザクション数の多いカードバトルゲームSteem Monstersは、Steemへの新規ユーザーの流入にも貢献しているようだ。Steemの特徴は、Steemitを入り口に、価値のあるコンテンツを投稿することで、誰もがBitcoinやEthereumといった仮想通貨を手に入れられる可能性があることだ。ユーザーの貢献によって仮想通貨を付与するサービスは他にも存在するが、法定通貨建ての価値があるものはほとんどない。仮想通貨を手にしたユーザーがさまざまなサービスを利用し、仮想通貨を流通させることでトークンエコノミーが形成されることが期待される。

今後の展望

分散型アプリケーションの分野は金融やギャンブルから始まり、現在はゲームが盛り上がりを見せ、さらに、従来ではインターネット上で中央集権的に提供されていたようなサービスも分散型アプリケーションとして提供されつつある。必ずしもすべてがブロックチェーンベースの分散型アプリケーションとなる必要はないが、トークンとの親和性の高い分野、さらに、前述のFacebookの事例のように中央集権的なシステムに疑問がもたれるような事件が起きている分野では、今後、改ざん不可能という大きな特徴を持つブロックチェーンをベースとした分散型アプリケーションのニーズが高まる可能性がある。

多くのブロックチェーンは依然としてスケーラビリティーの問題を抱え、大量のトランザクションをリアルタイムで処理するのは得意ではないが、ゲーム分野の盛り上がりなどとともに徐々にプラットフォーム、アプリケーションレベルでの解決策が提示されている。さらに、分散型のGPUレンダリングという大きな負荷が伴う処理をブロックチェーンで扱うRNDRのような野心的なプロジェクトも出てきている。また、技術革新と合わせて、実際にユーザーの利用が進む鍵となるトークンエコノミーの形成にも注目しておきたい。

Bitcoinの誕生から10年、分散型アプリケーションが一般に広く利用されるようになる日がくるのも遠い将来ではないのかもしれない。

署名: Aki T.

(提供:MUFG Innovation Hub

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