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中小企業の法人保険活用方法(シリーズ)法人保険を使った資産移転とは

前回は、中小企業の法人保険活用方法(シリーズ)内部留保と株式評価について、内部留保とそれが相続にどう影響するか、また自社株評価の流れについてお伝えいたしました。その最後に、自社株を譲り渡す、すなわち会社をどのように譲渡するかのポイントが4つあることもお伝えしました。

・株式の移動
・ビジネスオーナーである先代以外から後継者への株式の移動
・自社株評価の引き下げ
・納税資金の準備

では、具体的にそれぞれについて見ていきましょう。

株式の移動

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(写真=thitikan chuachan/Shutterstock.com)

株式を子どもや孫に移転させる際、「誰に移転させるか」は、おおいに悩む点かと思います。経営者としての素質を見抜き、会社のステークホルダーが納得できるようにすることが必要です。場合によっては、長男よりも次男が経営者としての素質が高い場合もあるかもしれません。その場合、遺言書によってその意思をしっかりと明示することが重要です。

また、法定相続人に相続をするにあたって、一時に相続を行うと相続税が多額にかかるケースがあります。その場合には、生前贈与を使いながら長年にわたり資産を子供や孫に移転することが可能です。また、最近は家族信託を使って生前元気な時から資産移転を活用する例も増えています。

先代以外からの株式の移動

実質的なオーナー以外が株式を所有している場合は、株式等売渡請求を使うことが主流になりつつあります。この制度は、総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)が、会社の承認を受けた上で、他の株主(少数株主)等が有する会社株式等の全部の対価を支払うことです。強制的に取得できる権利であり(会社法179条以下)、2014年会社法改正により導入されました。また、全部取得付き株式という種類株式を発行することにより、少数株主から株式を取得する方法もあります。

自社株評価の引き下げ

自社株評価を引き下げる方法としては、経費計上できるものを使うことがポイントです。例えば、「長年滞留している不良在庫、不良債権を処理する」「含み損のある不動産の売却」などが考えられます。また、オーソドックスな方法としては、役員報酬、役員賞与、役員退職慰労金を払うことで、法人から個人へ財産を移転しながら、株式評価を下げる手法があります。しかし、気を付けなくてはならないのが、個人に移転した後の所得税課税をされた後の手残りを考えることが必要です。

法人保険を使った所得移転方法

もう一つの方法として、法人保険を使った資産移転もよく使われます。この方法のメリットは、解約返戻金の額が保険契約時に確定しますので、金額がぶれることがない点です。さらに、時期についても「3年後、5年後にいくら戻ってくる」ということも確定されていますので、不動産や株式のように不確実性は避けられます。

また、保険ですから保障を得ながら高い税効果も得られるという点もメリットです。もう少し詳しく見ていきましょう。使う商品は「低解約返戻型逓増定期保険」です。その流れは以下の通りです。

1)2分の1損金タイプの低解約返戻型逓増定期を毎年500万円支払う契約締結
そのときには、「契約者:会社、被保険者:社長、保険金受取人:会社」とします。解約者は、保険金を払う人、被保険者は、契約保険でカバーされる人、保険金受取人は、被保険者が万が一のときにお金を受け取ることができる人となります。このとき、会社で保険金を払いますので、会社での経理処理が発生します。そのときの仕訳は、以下の通りです。

(借方) (貸方)
支払保険料(P/L) 250万円 現金(B/S) 500万円
前払保険料(B/S)  250万円

なぜ借方が2つの仕訳になるかというと、この商品が2分の1損金タイプだからです。さらに、契約時に、満期までの毎年の解約返戻率と解約返戻金が確定します。例えば、この商品の場合、下記のような設計商品とします。(この数字は仮定です。必ずこうなる商品があるとは限りません)

1年目 保険料累計 500万円  解約返戻率 5%  解約返戻金 25万円
4年目 保険料累計 2,000万円 解約返戻率 18% 解約返戻金 360万円
5年目 保険金累計 2,500万円 解約返戻率 97% 解約返戻金 2,425万円

2)4年目に法人から個人へ契約者を変更
「契約者:社長、被保険者:社長、保険金受取人:社長の遺族」に変更します。そのとき、4年目の解約返戻金360万円で社長が会社からこの保険を買い取ります。名義変更時の会社経理処理は下記のとおりです。

(借方) (貸方)
現金(B/S)  360万円 前払保険料(B/S) 1,000万円
雑損失(P/L) 640万円

3)5年目の保険料を1回個人で支払う
社長個人で500万円支払い

4)5年目の保険料支払い後、解約
その時点で、契約時に解約返戻金が2,425万円と決まっているので、社長はこの金額を受け取れます。社長の個人所得2,425万円に対しては、所得税の一時所得扱いで税金がかかります。これにかかる税金は(2,425万円-360万円-500万円-50万円)×2分の1=約757万円です。この約757万円がこのスキームから一時所得として申告する必要がある金額です。

一時所得の計算は、(収入―必要経費-50万円)×2分の1 の計算式となりますので、上記の計算式となります。これが、生命保険を使った法人から個人へ所得移転の代表的な方法です。

以下、次回のコラムへ(提供:Wealth Window


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