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世界最大級のハードウェアアクセラレーターHAXが日本参入、住友商事との連携で産業とスタートアップを繋ぐ

左から、HAX Tokyoゼネラルマネージャーの渡邊みき氏、SOSVジェネラルパートナーのDuncan Turner氏、Cyril Ebersweiler氏、SOSV創業者のSean O’Sullivan氏

住友商事、SCSK、ならびに深圳とサンフランシスコでハードウェアアクセラレーターの「HAX(ハックス)」を展開する国際的なベンチャーキャピタルSOSV Investmentsの連携により開始する「HAX Tokyo(ハックストウキョウ)」。

狙いは、日本における優秀なシードステージのハードウェアスタートアップを発掘し育成すること。HAX Tokyoは日本のスタートアップをグローバルレベルへ引き上げるための登竜門だ。

「SOSVのミッションは、特にディープテック領域の起業家が早く成長しできるだけ遠くまで行けるようように支援すること」

SOSVの創業者でマネージング・ジェネラルパートナーのSean O’Sullivan(ショーン・オサリバン)氏はそう話す。

「日本には技術的に優れている人材は多いが、あまり多くのハードウェアスタートアップが出てきていないように見える。アーリーステージの起業家に対する支援が足りていない」(O’Sullivan氏)

O’Sullivanに加え、SOSVのジェネラルパートナーで、中国の深圳でHAXプログラムのマネージングディレクターを務めるDuncan Turner(ダンカン・ターナー)氏、同じくSOSVのジェネラルパートナーでHAXサンフランシスコの代表を務めるCyril Ebersweiler(シリル・エバースヴァイラー)氏は7月9日、東京に集結し、世界最大級のハードウェアアクセラレーターであるHAXの今後について話した。

HAX Tokyoは「Stage0」

米プリンストンに本社を構えるSOSVはニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、深圳、上海、台北などに拠点を置く。HAXでは、ロボットやセンサー、コンシューマーエレクトロニクス、医療機器などの領域における200以上のスタートアップを支援。同社いわく、過去4年間でSOSVが支援した起業家によって創業されたスタートアップの価値は100億ドル以上、そして、それらによる収益は年間約10億ドルを超えている。

これまでのHAXには、プロトタイプ製造ならびに量産化体制構築のためのStage1である「HAX深圳」と、成長のための資金調達に特化したStage2の「HAXサンフランシスコ」により成り立っていた。

これらに加わるのが、Stage0にあたり、技術コンセプトやビジネスモデル確立のためのHAX Tokyoだ。

Turner氏によると、HAX Tokyoが注目しているのはコンシューマー向けではなく、B2B領域のロボティクス関連のテクノロジー。Stage0の舞台をフランスや他の国ではなく日本にした理由はそこにある。

「日本にはデジタル化を必要としている多くの伝統的な製造業の産業が存在する。だが、必要なテクノロジー自体は国内に揃っているものの、そのような産業とスタートアップが繋がっていないため、私たちは架け橋になりたいと考えている」(Turner氏)

Turner氏は「ロボティクスに限って言えば、日本には多くの優れたテクノロジーが存在するが、用途がわからないままの状態になっているように感じる」と説明。「興味深いソフトロボティクスやマニピュレーター関連の技術をよく目にする。だが、その技術をどのように活かすのか。その部分が考え抜かれていない」(Turner氏)

そのようなテック企業をB2B領域に集中させることで、製造業などに存在する、デジタル化に向けた「大きな需要」を満たすことがHAXの東京進出の目的だ。

HAX Tokyoで重点的にカバーする技術領域は、IoT、センサー、ライフサイエンス、ロボティクス、新素材など、となっている。

住友商事が語るHAX Tokyoの詳細

「日本の国内のハードウェア市場はこれまで、大企業が中心となって牽引してきたと言うが、近年では製造業での開発と製造の分離が進み始め、製造委託が広がってきている。スタートアップにとっては、大規模な設備を持たなくても生産が可能となり、ハードウェア分野での参入ハードルが徐々に下がってきている。また、インターネット市場においては、従来の、スマホやパソコンといった情報通信機器だけではなく、スマートウォッチ、AIスピーカー、AI家電、AIロボットなど、様々なハードウェアをソフトウェアを使ってインターネットに繋いで新しい顧客体験を提供するスタートアップが出始めている。このような状況において、ハードウェアに注目し革新的なアイディアを持つスタートアップに投資を行うVCの増加や、クラウドファンディングなどの普及によって、ハードウェア関連のスタートアップにとっては資金調達面においても、事業の立ち上げがしやすい環境が整い始めてきている」

そう話すのは、住友商事の理事でデジタル事業本部長を務める渡辺一正氏。同氏は7月9日、都内にて開催されたローンチパーティーにてHAX Tokyoの詳細について話した。

渡辺一正氏

「SOSVが培ってきたアクセラレーター運営のノウハウ、SCSKの高度なシステムインテグレーション、ITサービス、顧客基盤、そして住友商事が持つグローバルなビジネス現場、課題を持ち寄り、スタートアップの育成の支援と企業の新事業創出、事業変革を支援していきたいと考えている」(渡辺氏)

HAX Tokyoは約3ヵ月間のプログラムとなる。採択されたスタートアップには、HAXが200社を超えるスタートアップを育成した経験やノウハウをベースとした、約30項目のマイルストーンが設定される。例えば、「ターゲット顧客へのヒアリングによるニーズの理解の深化」、「アイディアからビジネスモデルへのレベルアップ」、「ビジネスプランの作成支援」、「投資家向けのプレゼン資料の作成、ブラッシュアップ」、「製品、サービスに関わる規則の調査」など。

そして、様々なメンタリングに加え、SCSKや住友商事の持つビジネス現場のヒアリングの機会なども提供される。

渡辺氏は「ビジネスの最前線にいるSCSKや住友商事のメンバーや、その取引先の方々との議論、交流を通じてリアリティのある生のビジネスニーズ、またはビジネスチャンスを掴んでいただき、アイディアを具体的なビジネスモデルにさせる」と説明した。

HAX Tokyoに採択されたスタートアップは住友商事が運営するオープンイノベーションラボの「MIRAI LAB PALETTE(ミライラボ パレット)」をオフィスとして利用する。

「スタートアップや投資家だけでなく、企業、大学、有識者、各分野のプロフェッショナルといった、様々な領域のタレントの方々と交流し、アイディア、技術シーズとビジネスニーズが出会う場をMIRAI LAB PALETTEに作っていく」(渡辺氏)

HAXの強みは世界的なコミュニティ

HAXの強みは、Stage0からStage2までの3ステップのプログラムとなっているため、参加したスタートアップが国際的なコミュニティの一部となれる点だ。HAX Tokyoでも、採択したスタートアップに約1週間、深圳を訪問する機会を与える。

渡辺氏は「深圳のオフィスを利用したり、HAX深圳に入居しているスタートアップや、彼らのメンターなどとコミュニケーションを取ることで、ハードウェアスタートアップのグローバルなエコシステムを肌で感じていただきたい」と述べていた。

そして、HAX Tokyoの最終日に開催されるデモデーで「HAX深圳の採択基準に到達した」と認められたスタートアップは、次のステージであるHAX深圳プログラムへの参加が可能となる。

そして、前述のとおり、HAXではこれまでに200以上のスタートアップを支援してきた。そのため、「HAXを卒業した後もスタートアップはオフィスに戻ることができる」といった継続的なサポートを提供する体制が整っているほか、「新入りは先輩方からアドバイスを受けることも可能だ」と、HAXサンフランシスコ代表のEbersweiler氏は話した。

Ebersweiler氏は「日本のスタートアップは国内に留まることが多く、国際的だとは言い難い」と評すが、国際的なVCであるSOSVがHAXの持つデータやノウハウ、コミュニティは、日本のスタートアップにとって、世界基準の企業になるための優れたリソースだと言えるだろう。

HAX Tokyoでは現在、参加を希望するスタートアップからの応募を受け付けている。プログラムは11月に開始し、2020年2月にデモデーが開催される予定だ。