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プロ経営者は、どうやってプレッシャーに打ち勝っているのか? 岩田松雄(リーダーシップコンサルティング社長)

どこかに必ずある「逃げ道」を常に意識しておこう

プレッシャー,岩田松雄
(画像=THE21オンライン)

スターバックスや『THE BODY SHOP』の日本法人など、数々の企業を率いて実績を残してきた岩田松雄氏。華々しい経歴だが、それは常に、大きなストレスやプレッシャーと背中合わせのものだった。岩田氏は、どのようにしてメンタルを健康に保ち、パフォーマンスを高めてきたのだろうか。

心が折れたきっかけは上司の交代だった

プロ経営者として、スターバックス日本法人をはじめ数々の企業を牽引してきた岩田松雄氏。業績不振からの脱却という使命を、その都度、成功させてきた軌跡が、多大なプレッシャーの連続であったことは想像に難くない。しかし、岩田氏が「心が折れた」経験として記憶しているのは、キャリアの初期、日産自動車在籍時のことだ。

「そのとき私は、社内の留学制度に応募して選抜試験に合格し、留学する資格を得たところでした。次なる目標は、ビジネススクールの入試に合格することです。目指していたのは米国のトップ10に入る難関校でした。

ところが、そのタイミングで、応援してくれていた上司が異動。新しく来た上司は、私の留学に対して好印象を持っていませんでした」

以降、風向きが急に変わった。留学準備に必要な時間を与えてもらえず、業務を大幅に増やされる日々。心の余裕が急激に失われていった。

「大量の仕事に対応しきれず、ミスをして、叱られる。『こんな状態では留学を取り消されるのでは』という被害妄想も出てくる。焦りでTOEFLやGMAT(ビジネススクール入学に必要な試験)の成績も下がっていく。まさに悪循環でした」

食欲不振、不眠に陥り、体重は1カ月で4キロ減少。その頃に撮った写真を見ると、目がうつろで、明らかに異常なのがわかるという。

「ところが、渦中にいると、自分でそれがわからないのです。妻に心療内科の受診を勧められても躊躇して、なかなか行こうとしませんでした。

最終的には、説き伏せられて近所のクリニックに行ったことで、気持ちに区切りがつきました。予約が詰まっていたため、実際に診療を受けることはなかったのですが、足を運んだことで、やっと『自分は病気なのだ』と自覚できたのです」

目標を下げたら逆に良い結果に

現状を認識できたことで、対処の道筋も見えてきたと、岩田氏は振り返る。

「まず、優先順位を整理しました。抱えていた問題のうち、最も私が気になっていたのは、仕事のミスで留学が取り消されることでした。ですから、平日は仕事に専念することにしました。

そして、試験勉強は土日を中心にすることにしたのです」

それに伴い、思い切って目標のレベルを下げた。

「トップ10ではなく、トップ30のビジネススクールを目指すことにしました。当時の私のスコアでも、ギリギリ射程距離に入る目標です。大事なのは、難関校に入ることではなく、留学することなのだから、ハードルを下げていい、と考えました」

プレッシャーを軽減させて心の安定を得た岩田氏は、最終的に、当初の第1志望であった、トップ10に入るUCLAに合格した。目標を下げたことが、逆に、良い結果をもたらしたのだ。

「それ以来、数年間は、不安感で心臓がドキドキすることがありましたが、ムリをしないで、その都度、逃げ道を考えるようにしたことで、メンタルのコンディションを大きく崩すことはなくなりました。しかし、心の傷を癒すのには時間がかかりました。

UCLAでの1年目の試験のときも、落第をしてしまうのではないかと、大きな不安を感じたことがありました。経営者になってからも、非常に強いプレッシャーがかかると、動悸が起こることがありました。なんとも言えない焦燥感が、何度か蘇りました」