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ノルウェーの「女の子が内側からすてきになるためのルールブック」

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13歳の女の子の3人に1人が体重を減らしたい。


15歳の女の子の半数がダイエットをしているか、以前していたことがある。


52%の女子高校生が、自分が太りすぎだと思っている。


ダイエットをしている10%がその後拒食症を発症する。


10万人の若者が摂食障害を患い、そのうち90%が女性である。


15-16歳の女の子4人に1人が鬱のような症状を経験し、3人に1人が自分自身に満足していない。


拒食症は、10代の女の子にとって事故と癌の次に多い死亡原因である。

このデータは2014年のノルウェーのもの(最後の死亡原因はヨーロッパ全土におけるデータ)。ノルウェーの人口は約520万人なので、摂食障害を患っている若者がいかに多いかが想像できる。

思春期の女の子たちが平和な幼い子ども時代を過ぎ、身体の成長とともに性に関して様々な方面から求められる役割とそれへの違和感、そして時にそれが深い傷として心に突き刺さるという体験は、多くの女性が経験的に知っていることではないか。

“JENTELOVEN” (北欧の「出る杭は打たれる」的なニュアンスのある「ヤンテの掟」“JANTELOVEN”をもじったもの)と名付けられたこの本は、女の子たちに、フェミニズム的な視点から伝えておきたいことが様々な形でまとめられている。

作者は、ノルウェーの超人気ドラマ「SKAM」 やインスタグラムでもよく知られ、拒食症の経験もあるUlrikke Falchと、教員資格をもつコメディアンで、トゥレット障害のあるSofie Frøysaaの2人。

彼女たち自身の経験談を交えながら、様々なアプローチで、若い女性を取り巻く「女性であること」に関する思い込みや性的役割観を打ち砕き、新しい女の子(Jente)のための掟(lov)を作り出したのがこの作品だ。

 

内容は「学校」「身体」「セックス」という三大柱の構成。ページをぱらぱらとめくると、日記のようなページがあるかと思えば、格言的なもの、クイズやビンゴなどゲームのようなものなど、まるでコラージュのような作りになっている。

 

もう少し具体的に紹介すると、「男子のタイプ分け」「女子的あるある」など、女の子たちが学校生活で投げかけられるさりげない言葉、期待されている態度、男女の偏見などを描写しているページ、有名な女性歌手や女優が語る言葉、「性差別者」「フェミニズム」などの言葉の定義、また、ノルウェーの女性史上大きな役割を果たした人々についての情報などもある。

また、女性の理想の体型が歴史的にどう変化してきたかや、インスタグラムでポージングしている女性の姿勢がどれほど不自然かについて分析していたりと、思春期の女の子たちが日常的にメディアやSNS、周りの環境から与えられる情報を、一旦立ち止まって考えてみるためのきっかけがたくさん紹介されている。

 

さらに、“Body-shaming” つまり人の身体的な部分を否定的に評価することを止めようと提言し、それに代わって“Body positivity”(これはUlrikkeが自身のインスタグラムでもモデルや有名人のポージングと同じことをして見せている)を紹介したり、「自分を形作っている目に見える部分ではなく、目に見えない部分にも注目しよう」という提案から、「創造性」「批判的思考」「好奇心」「ユーモア」「謙虚さ」「共感力」「自発性」「協力的」など、個人の特徴にも目を向けて、違う角度から自分自身について考えることも提案している。

 

そしてUlrikkeとSofieそれぞれの思春期の体験談もとても印象的だ。

摂食障害に至るまでの幼い頃の様子から、抑うつ症状や拒食症の日々を赤裸々に綴っているUlrikke。

Sofieは肌に問題があり、それがもととなった酷い虐めと自信のなさ、不登校、引きこもり、そしてトゥレット障害など辛い日々について綴っている。

どれも思春期の女の子たちにとっては身近な問題であり、実際にノルウェー社会でよく知られている女性2人が、自分自身の言葉で10代の苦しく生きづらかった日々から、どのような心境や考え方の変化を経て、今、自分自身を強く持てるようになったのかを描いた部分はとても強いメッセージとなっている。

 

さらに現代的だと感じられるのが、セックスについてのページ。

「準備ができたっていえるのはいつ?」など、10代の知りたいことに答えるページや、作者2人の悲しい性体験談はもちろん、男の子からペニスの写真が送られてきた時(!)の対応策、さらに、リベンジポルノについても具体的な対応策が示されている。

そして以前ツイッターでも話題になった、性行為の同意を紅茶を飲むという行為で伝えるイギリスの動画についても触れている。インターネットやSNSが生活の大前提となっている女の子たちが晒される様々な危険について具体的に踏み込み、冷静な判断を促しているところもとても良い。

 

多様な視点からリアルに、時にユーモラスに読者に語りかけながら、既存の女性性のあり方を批判的に検証しているこの作品。

作者たちがノルウェーでよく知られた女性であり、彼女たち自身の体験等を通して、フェミニズム的視点を思春期の女の子たちの現実にうまく当てはめ、多様な視点から、彼女たちの感じる生きづらさや違和感を紐解いていて、とてもよくできた作品となっている。

 

敢えて難点を言えば、例えば男の子たちのふざけ行為への対応策があまり建設的には感じられないこと。

でも、これはもしかしたら役に立つ解決法として示しているというよりは、読者である10代の女の子たちのリアルな日常と、彼女たちのフラストレーションに寄り添ったものとして示されているのかもしれない。


また、この本の問題提起すべてが、そもそも読者である女の子たちだけの問題ではなく、同世代の男の子たち、大人など男女ともに考えていかなければいけないことであり、女の子だけに訴えかける作品ではなく、むしろ“Menneskelov” (人間の掟)として、男性も含めた読者向けに作ることもできたのでは?とも思う。ちなみにこの考えは、作者たち自身も新聞等のインタビューでよく指摘されている。

 

男女平等が進んだ北欧でも、思春期の女の子たちの生きづらさがこの作品を通して共有されている(この作品はちなみにデンマークでも高評価)。

これはなかなかリアルで興味深い。普段あまり語られることのない、でもまだそこに「ある」、女性に関する問題の根深さ。

でもそれをもう終わったこととせず、あるいは理想論を語るだけでもなく、違和感に率直に向き合い、自分たちで内側から現実を変えていこうというアプローチを提示しているところにもまた、北欧らしい実直さ、誠実さが表れている。

(3月29日掲載のさわぐりさんのnote「女の子が内側からすてきになるためのルールブック」 より転載)