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トルコショックはブラックスワンの始まりか、トルコショックの原因と影響について考察

昨年の8月に起きたトルコショックにより、トルコ共和国の基軸通貨であるリラが突如暴落しました。そして今年の3月26日に2度目の新トルコショックが起き、トルコ発の世界的経済不安に発展する事態が起きています。

その要因はリラの急落によって欧州の金融機関が保有するトルコ関連の金融資産が焦げつくことが懸念されているからです。今、トルコに何が起きているのか、今後はどのようなシナリオが待っているのか、今回はトルコ経済の行方について詳しく解説していきます。

トルコショック
(画像=Getty Images)

トルコショックとはなにか

トルコショックを把握するためには、トルコが経済的には新興国であり、投資という観点でいえばエマージング市場であるため、アメリカ経済の影響を直接受けやすいことを理解する必要があります。これはアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の金利政策に左右されることを意味します。つまりFRBが金利を下げた場合、金利が高い新興国へと資金が集まりトルコ通貨リラも上昇します。

反対にアメリカの金利が上昇すると新興国市場にある資金が再びアメリカに集中するので、トルコ通貨リラは下がります。実際、昨年にFRBが金利を上昇させたとき、トルコやアルゼンチンなどのエマージング市場の通貨が暴落しました。

このような仕組みを理解した上で、なぜトルコショックが起きたのかを説明していきます。

トルコショックはNATO(北大西洋条約機構)の加盟国であるアメリカとトルコの間で、2016年7月にトルコで発生したクーデター未遂事件が発端になっています。トルコ側が黒幕として主張するアメリカ在住のイスラム組織指導者の引き渡し請求をアメリカが証拠不十分として拒否したことで、両国の間に火種が起きました。

そうして背景があり、同年にトルコがクーデター未遂に関与したとして米国人牧師を拘束し、激怒したトランプ政権は引き渡しを要求しますが、トルコはこれを拒否します。そして2018年に入りトランプ政権は制裁としてトルコの鉄鋼やアルミニウムの関税を引き上げました。そうした要因が引き金となり起きたのが、トルコ通貨リラが急落したトルコショックなのです。

一時期トルコリラは対ドルレートで7リラ前半まで下がり、市場最安値を記録するほど深刻な事態となりました。それに続いて今年3月26日に再び新トルコショックが起き、いまなお混乱が続いているのです。

なぜトルコショックが起きているのか

トルコショックが起きた発端はもう一つあります。トルコ経済は他の新興国と同様に対外資本依存度が高いです。海外から資金を集められるため、トルコリラの国債は金利17%と新興国の中でも群を抜いて高い水準です。そのため、日本を含めた先進国の投資家にとってリスクは高いものの、リラはキャリートレードを考える上でとても魅力がある投資先です。

トルコショックの問題の根幹には、前述の通りエルドアン政権とトランプ政権の関係悪化があります。これに敏感に反応した外国人投資家がリラに空売りを仕掛けたために、リラは暴落したのです。

そこでエルドアン政権は外国投資家にリラの貸し出しを止める戦略に出て、一時的に空売りを禁止しました。そうすると、外国人はリラを売ることができないため一旦リラの価格は回復します。けれどこれで終わらず、今度は外国人投資家が通貨のリラではなく保有するトルコ株と債券を売却してリラの資金を作り、再び空売りをすることでトルコの株価がさらに下がったのです。これがトルコショックが起きた原因です。

エルドアン体制は17年間という長期政権ですが、ここ数年でアメリカとの関係が冷え込み、急速に国民の間に失望が広がっているといいます。次にエルドアン政権のトルコの経済政策についても見ていきましょう。

トルコの経済政策

オスマン帝国の復活を掲げて発足したエルドアン体制は現在まで17年間続いており、長らく経済成長を続けていました。ところが、長期政権によって次第に独裁的な傾向が強くなり、2016年には軍の一部によるクーデター未遂事件が起きました。この事件をきっかけに2018年は再選こそしたものの、エルドアン体制によって、国民は国外へと移住する人々が急増しています。

元来、エルドアン大統領は中産階級や一部のエリートたちを優遇していましたが、アフラシア銀行が作成した年次レポートによると、恩恵を受けたハイクラスのビジネスマンや富裕層全体の約17%が資産を国外、特にUAEへと移していることが分かりました。そして同レポートの中に「国が崩壊する歴史は、崩壊前にいち早く資産家が国から逃げだすことだ」との指摘もあり、2009年に起きたギリシャ危機のような混乱が起きることが懸念されています。

そしてトルコ経済は他の新興国と同じように外国からの資金に頼る政策に偏っており、現在は国の信用が著しく低下し、今までのように資金が集まりません。リラの国債は17%と高いため日本人にも人気でしたが、2度のトルコショックにより急速な売りと買い控えが起きています。

トルコ国内に至っては、インフレが加速し金融引き締め策によって個人消費も減り、内需も右肩下がりで下がっています。また高インフレと対外債務が増加しており、経済状況は悪化しているのです。

そうした状況のなか、今年の3月31日に行われたトルコの統一地方選挙ではエルドアン大統領率いる与党の公正発展党(AKP)が、首都アンカラ、イスタンブール、イズミルの3大都市で相次いで落選し、野党の共和人民党(CHP)と改善党(IYI)が当選する予想外の結果となりました。長く民族弾圧に苦しむクルド人の票が選挙結果に影響を与えたのは明らかで、エルドアン政権も求心力を失い、今ままでのような国政の舵取りは難しくなり、今後も予断を許さない状況が続いています。

トルコの国や風土について

トルコはヨーロッパとアジアの間に位置しています。国土は日本の約2倍と広大で人口は8000万人を超えます。その歴史は1299年に成立したオスマントルコ帝国から始まり、1923年から現在までトルコ共和国として発展してきました。

ヨーロッパ側の国境はギリシャやブルガリア、アジア側はシリアやイランと接しています。様々な国と接していることとイスラム教の国であることが特徴です。

最近ではトルコの隣国シリアの内戦に絡んだ過激派組織「イスラム国(IS)」掃討戦によって、トルコが敵視するクルド人民兵組織をアメリカは友軍としたため、両国は一触即発の状況に陥ったほか、トルコは関係を深めるロシアの最新鋭地対空ミサイルS400の購入も計画してアメリカをいら立たせているのです。

「MSCI Turkey」からみえてくるトルコ企業

今度はトルコを代表する企業群MSCI を通じて、トルコ経済を見ていきましょう。このMSCIは米国のナスダック市場に上場している「iシェアーズMSCIトルコETF」という名称で、トルコ・イスタンブール取引所に上場している企業群で構成された投資信託を購入できます。

組み入れ銘柄トップ3は、以下の通りです。(2019年5月時点)

  1. ガランティ銀行(ティッカー:GARAN)
  2. Ak銀行(ティッカー:AKBNK)
  3. BIMビシュレジッキ・マーザラージ (ティッカー:BIMAS)

その他、組み入れられた企業を見ても、誰もが知る世界的大企業が存在せず、それはトルコが経済新興国であり、アメリカFRBの経済政策の影響を直接受けやすいことを意味しているのです。

トルコショックが世界経済に与える影響

トルコショックにより世界中の国や機関投資家が恐れているのは、2015年に起きた「欧州難民危機」と言われています。なぜなら債務危機を超える危機と言われ、現在も根本的な解決には至っていないからです。EUに流入する大量の難民はトルコを経由地としてギリシャに渡っており、EUはトルコと協力して流入を止めているのが現状だからです。

これは「EU・トルコ合意」によって、 EUがお金を払いトルコに難民を引き取ってもらっている形です。つまり、EUの政治安定は英国のブレグジットだけでなく、EUの隣国であるトルコのエルドアン政権の手中にあるとも言えるのです。トルコが故意でなくとも国内情勢に混乱が生じれば、難民が大量に流入する恐れがあるのです。

そして、トルコショックの問題はエルドアン政権とトランプ政権の対立が発端であるため、両国の関係が一刻も早く安定することこそ、トルコ経済の発展には欠かせないはずです。

トルコショックはブラックスワンの始まりか

ブラックスワンとは、20世紀半ばまで白鳥は白しかいないと考えられていた時代に「黒い白鳥」が発見される想定外の自体が起き、それを金融市場にも喩えて使われるようになった言葉です。

ブラックスワンとバーベル戦略について

そしてブラックスワンは、予測不能で非常に強い影響力があり、実際にブラックスワンが起こったときは、はじめから想定できたような気にさせられる、といった特徴があります。つまり、トルコショックやギリシャ危機、リーマンショック、日本のバブル経済崩壊、ブラックマンデーなどの金融危機は、実際に不測の自体になる前に予測できる人物は専門家でもほとんどいないのです。

ブラックスワンを完全に回避することは出来ないものの、トルコへの投資はデフォルトリスクがあること念頭に置く必要があります。今後もしばらくエルドアン政権とトランプ政権の関係、EU存続を揺るがしかねないブレグジットの問題など、世界各地に問題は山積しており、目の離せない駆け引きがしばらく続くはずです。トルコショックがEUの解体へと繋がる可能性も否定できないのです。(提供:The Motley Fool Japan


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