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データ分析で抑えるべきは細部ではない。大切なのは「大きな傾向をつかむ」こと

(本記事は、齋藤健太氏の著書『新装版 問題解決のためのデータ分析』=クロスメディア・パブリッシング、2019年2月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

前回は、効率的に問題解決を進めていく上で「ロジックツリー」を活用するメリットや、その際のポイントを解説しました。

今回は、効率よくデータ分析を行っていくためのコツをお話しします。

なぜ「大きな傾向から」がよいのか

データ分析
(画像=Chaosamran_Studio/Shutterstock.com)

本記事は、“実戦で使える”知識をお伝えすることを目的にしており、数値データにも触れていただきたいので、図表を数多く入れています。データ分析に詳しい同僚が隣に座って説明してくれているというイメージで読んでいただければと思います。

データ分析を効率よく進めていくにあたって大切なことは、「大きな傾向から掴んでいくこと」です。

たとえば、全国に店舗があるような小売業態の売上を伸ばす施策を考えるためのデータ分析を行う場合、企業全体での売上推移の増減をみる→売上増加している店舗と売上減少している店舗を分類する→売上が減少している店舗の特徴は何か考える、といったように、大まかな状況の傾向から掴んで、徐々に仮説を絞り込んでいくのです。

その上で、客数が減少しているのか、客単価が減少しているのか、立地条件での差、店長の力量の差……と細かく分析していきます。

野球でたとえれば、一からピッチャーを育成する際、いきなり「足はあと5cm高く上げて、手首はあと半回転捻りなさい」などといった教え方はしないでしょう。まずは、足の上げ方、腕の振り方など、大きな動きを覚えてもらうところからです。

そして、大きな動き(フォーム)を覚えたあとに、より正確なボール、あるいはより速いボールを投げるために、足を5cm高く上げたり、手首を半回転捻ったりといった細かい動作を微修正しながら精度を高めていくはずです。

データ分析もまったく同じで、大きな傾向から掴んでいき、掴んだ傾向の中で課題が見つかったところを深掘りして細かく分析していきます。

細かいところに入りすぎてしまう罠

しかし実際には、いきなり「足はあと5cm高く上げて、手首はあと半回転捻りなさい」のような、細かい部分のデータ分析から入ってしまうという罠はよくあるのです。

たとえば、図表25の商品別の売上増減率では、商品Aから商品Eの5商品を比べたときに、商品Eが最も減少率は高く、売上減少を招いている原因のように思われます。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

他方、図表26は、商品別の売上金額と、全売上に対する構成比に、図表25で示した増減率を加えたものです。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

最も減少率の大きい商品Eは、全売上に占める割合は2018年度にはたった2%しかないことがわかります。

一方で、減少率は小さいものの、商品Aが全売上の減少額以上の減少をしていることがわかります。

つまり、この場合、いくら商品Eの売上減少を抑えることができたとしても、売上全体を改善するには至らず、目的を達成させるための本質的な解決策にはなりません。売上を増加させるためには、売上全体の半分近くを占めている商品Aの売上減少要因を把握し、改善することが必要です。

上記の例は少し極端かもしれませんが、「減少率が大きい」ことを売上減少の要因だと勘違いして、あまり意味のない分析をしてしまうことはよくあるのです。

もちろん、まったく関係ないわけではなくとも、限られた時間の中で効率的・効果的なデータ分析を行うためには、大きな傾向から順番に見ていくことが重要です。その際には、必ず“実数”を常に見ていく、ということを意識してください。

大きな傾向から掴むことで「目的」も見えてくる

データ分析を行う際に、その目的を定めることが最も大切ですが、現実にはその目的が漠然としている場合がよくあるのではないでしょうか。

たとえば、社長や上司自身も、売上減少や収益性悪化の要因がわからず、解決策を立てられないために、結果としてあなたに漠然とした宿題が与えられることも少なくないと思います。

このようなとき、数値データを大きいところから分析することで、徐々に目的を詳細に定めていくことができます。

Case Study
ある日突然、社長から呼び出しがあり「売上が減っているから売上増加施策を考えろ!」という命題が出されました。

まず会社全体の売上推移〈図表27〉を見ると、2015年度には50億円あった売上が、4年間で徐々に減少しています。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

図表28の事業別の売上傾向を見ると、アパレル事業・不動産事業・その他事業がありますが、アパレルの販売事業が全売上の9割以上を占め、かつ減少額のほとんどを占めています。

不動産事業は横ばい、その他事業の構成比はほとんどないので、アパレル事業に絞り、仮説を立てていきます。

・店舗別に売上増減に差が見られるのではないか
・商品別に売上増減に差が見られるのではないか
・顧客別に売上増減に差が見られるのではないか

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

ロジックツリーで仮説を含めて整理したものが図表29です。ここからは、順番に数値データを分析していきます。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

店舗別売上について、店舗別の売上推移〈図表30〉を見ると、全店舗において売上が減少していることがわかります。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

どの店舗も年平均成長率が−4%~−7%となっており、多少の違いはありますが、目立つほどの差は見られないことから、売上減少の要因としては店長の力量や立地条件の可能性は低いといえます。店舗ごとに大きな差が表れていないので、競合店舗が近くに出てきて新規顧客が減少したという可能性も低いでしょう。

そのため、この部分を深掘りしても、売上増加策につながるような意味のある情報が得られる可能性は低くなります。

商品別売上については、図表31の売上推移を見ていきます。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

年平均成長率がどれも同じようなことから、店舗別の売上推移と同様、商品ごとに大きな差は見られません。ただし、全体が下がっているということは、このアパレルブランド自体を好んでいたお客様の母数が減った可能性があります。たとえば、お客様の嗜好が変化したにもかかわらず、それに対応できなかったのかもしれません。

そのような仮説を残しつつ、次にいきましょう。大きな視点でまずはさまざまな角度から分析していくことが重要です。

次に、顧客別売上について見ていきます。図表32の顧客別の売上推移は、顧客を既存顧客と新規顧客に分け、それぞれの顧客の年間購買回数ごとの購入金額を示したものです。

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(画像=新装版 問題解決のためのデータ分析より)

これを見ると、新規顧客の売上が大きく減少していることがわかります。

既存顧客については購買頻度が高い顧客は横ばいから微増傾向であり、購買頻度の低い顧客については売上が微減傾向にあるものの、減少額全体に占める構成比としては高くないので、大きな要因ではありません。

ようやく差が出るデータ分析となりました。

以上のことから、売上減少の要因は「主に新規顧客が取れなくなったこと」だということがいえるでしょう。

そして、このあとの分析としては「なぜ新規顧客が減ったのか」を導き出すことにフォーカスしていくことになります。

このように、数値データを大きな傾向から分析することで、徐々に要因を絞っていくことがとても大切なのです。

新装版 問題解決のためのデータ分析(3)へ続く

『新装版 問題解決のためのデータ分析』
齋藤健太(さいとう・けんた)
株式会社クロスメディア・コンサルティング代表取締役社長。慶応義塾大学理工学部卒業。(株)船井総合研究所にて戦略コンサルティング部に属し、幅広い業種において、主に中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等に携わる。その後、2012年1月に独立。独立後も製造業や小売業、サービス業など大小さまざまな企業の課題発見に従事し、成果を上げる。特に、データ分析においては、他のコンサルティングファームからも依頼がくる実績を持つ。2018年10月にクロスメディア・コンサルティングを設立、現在に至る。

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