富裕層・投資家の「今と先」を伝えるキュレーションサイト

カイエン カブリオレも──ポルシェが選ぶ幻の試作車5台

軽量2シータースポーツの『984』、オープンカーのラグジュアリーSUV『カイエン』 第5位は、軽量の2シータースポーツカーのプロトタイプ『984』だ。ポルシェは1984年から1987年にかけて、スペインの自動車メーカーSeat(セアト)への協力をきっかけに低価格な小型スポーツカーの開発に取り組んでいた。2.0L水平対向4気筒の空冷エンジンをリアに搭載し、最高出力は135ps、重量は880kg。価格は4万マルク(約260万円)前後で、おもに若者をターゲットにしたマーケティング戦略を練っていたという。 カブリオレや格納式固定ルーフなどさまざまなアイデアが検討されたが、1987年にアメリカで発生した株価大暴落、いわゆるブラックマンデーによってポルシェの資金繰りが悪化。それにより『984』のプロジェクトはお蔵入りとなってしまったのだ。 第4位は『カイエン カブリオレ』。そう、スポーツカーブランドによるプレミアムSUVというカテゴリを切り拓いた人気車種のオープンカーである。SUVをオープンカーにするアイデアは、すでに2015年に登場した『レンジローバー イヴォーク コンバーチブル』によって実現しており、現在もフォルクスワーゲンが『T-Roc カブリオレ』を開発している。しかし、ポルシェは2002年の段階でそれを具体的に検討していたわけだ。 注目してほしいのはリアセクションだ(文末の動画で確認できる)。リアが中央から左右に分かれ、それぞれがまったく異なるデザインとなっている。これはふたつのデザインを比較検討していた証で、コンピュータシミュレーションが導入されていなかった時代ならではのプロトタイプだ。結局、エンジニアがコスト削減を目的にデザインをひとつに絞り込んだことで、この『カイエン カブリオレ』は幻に終わってしまったのである。 『911スピードスター』の原型となった試作車、奇抜なデザインの『パナメリカーナ』 第3位は、1987年に製作された『911カレラ 3.2 スピードスター』だ。ベースとなったのは『911カレラ』、その源流は1950年代の初代『スピードスター』に遡る。純粋なドライビングプレジャーのために設計されたシングルシーターのプロトタイプで、ご覧のようにフロントウィンドウすらない。この試作車で試みたスタイリングは、のちにコレクターモデルとなる2シーターの『911スピードスター』へと受け継がれた。 第2位は、奇抜なスタイリングをもつ『パナメリカーナ』というコンセプトモデルだ。創業者であるフェルディナント・ポルシェの次男で、のちにポルシェの会長となったフェルディナント・アントン・エルンスト・ポルシェ、つまり“フェリー”ポルシェの80回目の誕生日プレゼントとして、1989年に製作されたクルマである。 このコンセプトモデルの特徴は、ボディ全体にシームレスに続いていく滑らかなライン。964型『911』をベースに、軽量な複合素材を用いてわずか数カ月の短期間で作られたという。開発チームは量産化を目指していたが、経営陣は財政難を理由にお蔵入りを決断。しかし、スラントしたヘッドライトなど、いくつかのデザイン要素は993型『911』や『ボクスター』に受け継がれ、ルーフのデザインは『911タルガ』に影響を与えた。 プロトタイプ1位は、スーパースポーツ『918スパイダー』の“ローリングシャシー” 第1位は、2013年に発売されたハイブリッドスーパーカー『918スパイダー』のプロトタイプ、“ローリングシャシー”である。ローリングシャシーとは、シャシーにホイールやサスペンションなどを組み込んで実走できるようにしたもので、この車両はガソリンと電気のハイブリッドシステムが確実に動くかどうかを見極めるために製作された。 むろん当時からポルシェはデジタル技術によるバーチャルプロトタイプでシミュレーションを行っていたので、本来ならローリングシャシーを製作する必要はない。しかし、『918スパイダー』だけはローリングシャシーで実際に走らせる必要があった。ハイブリッドシステムがどう作動するかを確認するには、こうする以外に方法がなかったからだ。 その後、『918スパイダー』は耐久テストやクラッシュテストなどを経て2013年に市販化され、918台を送り出したのち、2015年6月に生産を終了した。ちなみに、トップ5に選ばれたプロトタイプのうち、市販化されたのは『918スパイダー』のみである。