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オリジナリティが出しにくくても成功する「たった1つの信念」とは?

(本記事は、桑田純一郎氏の著書『こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である』あさ出版、2018年11月27日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「お金」を第一に考えない

こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である
(画像=Ivan Svyatkovsky/Shutterstock.com)

●地域と顧客あっての企業である

企業というのは、お客さまあっての存在です。

もう少し視野を広げれば、自分たちがビジネスの拠点としている「地域」あってこその我々です。

ですから、その地域で求められていること、お客さまに満足していただけるものを提供することが本来の企業の使命。

したがって、私はつねにこう考えています。

「何をすればお客さまに喜んでいただけるだろうか」と。

利益は、自社の健全性を維持し、顧客によりよいサービスが提供できる程度に確保できればよいと考えています。利益が出なければ、地域の役に立つこともできませんし、お客さまに喜んでいただけるものを提供することもできません。

利益云々を考えるのではなく、価値を生み出すことに一生懸命努めれば、地域やお客さまから支持されるようになり、それが結果として利益につながるのです。

これが利益のために、となると企業の行動はまったく変わってしまう。

儲けを優先するようになり、あの手この手をつかって少しでも利幅を広げようと操作しはじめます。

そうした変化にお客さまは敏感です。「儲けることしか考えてないな」そう感じさせてしまったら最後、顧客は一気に離れてしまうでしょう。

私たちは創業以来、一度たりともお金を第一にすることはありませんでした。

社員の幸せと、地域への貢献を最優先に取り組んできた結果、差別化がむずかしい金融業界にあって、独自性のあるビジネスモデルを確立し、地元の中小企業や個人のお客さまから厚い信頼をいただけるまでになったのです。

●「人間性」で勝負する

金融機関が扱う商品は、基本的にはどこも一緒。商品の種類でオリジナリティが出しにくいため、各行とも競って貸出金利を下げることで差別化をはかろうとしてきました。

しかし、低金利競争は自分たちの収益力を削ぐことになり、そこから脱却しない限り、いずれ経営が危ぶまれる銀行も出てくると予測されています。

いま、人口減少や日銀のマイナス金利政策もあって、低金利以外の戦略が立てられずにいる多くの金融機関が収益確保に苦しんでいます。

私たちはこれまでもこれからも低金利や手数料の価格で勝負することはありません。

では、何で独自性を出すのか。それは、「人」に尽きます。

差別化がむずかしい業界だからこそ、職員の「人間性」で勝負し、お客さまの心をつかむしかないと、「いい人材」の確保と、「人材育成」に力を注いできました。

会社とは、人の集合体です。どんな人間が働いているか、どんな意識で仕事に向き合っているか。それによって企業の風土、社風はつくられます。ですから、人材の採用と育成はきわめて重要なのです。

●社員は企業の道具ではない

どんな人材に但陽信用金庫の一員として加わってもらいたいか。どんな職員に育ってもらいたいか。私には明確に求める条件があります。

それは、経営理念にも掲げている、「人間愛」にあふれた人です。

具体的には、「やさしさ」「思いやり」「誠実」の3要素が大事。

営業力があるとか、斬新なアイデアの持ち主だとか、企画のセンスが抜群だとか、即戦力に結びつくような要素は特に求めていません。そうしたビジネススキルは、あとからいくらでも身につけることができるからです。

それよりも重要なのは、人間性です。

どれだけ親身になってお客さまのことを考えられるか。「お客さまに喜んでいただきたい」という情熱があるか。問題が起きたとき、謙虚に誠実に向き合うことができるか。

「お客さまのために、地域のために」働くこと、また、お客さまから「ありがとう」と言われたとき、自らの喜びにすることができるか……。

こうしたことは、あとから備えようとしてもむずかしい。やはり、これから仕事を覚えようという入社したばかりの時期が重要です。

当金庫では、お客さまとの商行為は「取引」ではなく、「おつきあい」と呼ぶように徹底させ、自らを金融機関ではなく、「地域のよろず相談所」として、顧客からのどんな相談にものるようにと教育しています。

また、20年以上にわたり、全職員がボランティア活動に携わっています。

こうした社会貢献活動を通じて、人に対するやさしさや思いやりが自然と育まれ、心の底から人の役に立ちたい、困っている人を助けたいという人間愛にあふれた職員がそろうようになったのです。

一朝一夕に、すばらしい組織になれたわけではありません。ここに至るまでには何年もの歳月を要しました。人が育つのには、時間が必要なのです。

多くの企業は採用したときからすぐに戦力として使える人材を求めます。効率や生産性を優先するあまり、人を育てることに労力をかけられない企業がずいぶん多い気がします。

しかし、職員は企業の道具ではありません。お客さまに喜んでいただくことを考えるのと同様に、職員が満足してくれる環境をつくるのも経営者である私の使命です。

当金庫(※但陽信用金庫)には社員のためのさまざまな福利厚生を用意しています。職員は全員、宝であり家族です。彼らが安心してのびのび活躍できる職場を整備することに配慮してきました。

すぐに会社の経営理念や方針を理解し、即戦力として活躍してもらうことを私は望んでいません。職員一人ひとりが納得しながら、前に進んでくれたらそれでいいと考えています。

今日、植えた苗木が立派な成木になるには何十年とかかります。

ゆっくりでもいい。着実に成長してほしいと願っているのです。

こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である
桑田純一郎(くわた・じゅんいちろう)
昭和47年、日本大学経済学部卒業。同年、但陽信用金庫入庫。平成2年より理事長。NPO法人但陽ボランティアセンター理事長、更生保護法人兵庫県更生保護協会副理事長、公益財団法人近畿警察官友の会兵庫県支部長、加古川商工会議所相談役、日本遺産「銀の馬車道・鉱石の道」推進協議会副会長、兵庫県日赤有功会副会長(会長代行)。

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