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アレクサ、おばあちゃんにトキメキをあげて。 認知症の祖母へのプレゼントが生んだ意外な効果

アレクサが搭載されたアマゾンエコー

きょう、何曜日だっけ。きょう、どこかに行く予定あったっけ。

そんな疑問が頭をよぎるのは、どんな人にもあること。でも認知症であれば、回数は数時間に1回、数十分に1回になるかもしれない。

聞かれた方は大変だ。「さっきも言ったのに」と、どう対応すればいいか戸惑ってしまうこともある。

千葉県に住む大学2年生の中野湧仁さん(20)も、そんな認知症の祖母(84)を見て、祖母にも周囲にも優しい解決方法を探していた。

祖母が家にいる間、中野さんの母は祖母の身の回りの世話をしている。すると、何度も同じ質問をする祖母に「すごい頻度で曜日を聞いてくるの」と少し困った様子だったという。

テクノロジー好きだった中野さん。ある日、アレクサを搭載したアマゾンエコーは、予定や曜日を答えてくれる機能があることを思い出した。

そこで中野さんは、祖母にアレクサをプレゼントすることを思いついた。

 

根気強く答えてくれるアレクサ

2月3日、中野さんはアレクサを祖母にプレゼントした。設定は中野さんが行い、質問すれば答えてくれるようにしておいた。

曜日や天気を聞くようになった祖母。アレクサは、どんな質問でも根気強く答えた。アレクサは、祖母とすぐに打ち解けた。

ITやテクノロジーと言えば、高齢者にとって「分かりにくい」「扱いにくい」といったイメージも強い。だが、スマートスピーカーは声だけで操作できるので、煩わしい操作は必要ない。

言葉一つで情報も教えてくれるし、「アレクサ、寒い」と言えば部屋の温度も調整してくれる。

中野さんは、アレクサを簡単に操作する祖母の姿を見て、「スマートスピーカーは介護業界に役に立つのではないか」と思うようになったという。

「ボタン入力であったりタイピングしたりするのって高齢者の方からしたらハードルが高すぎてしまいます。 ですが、声なら高齢者の方でも問題なく使える。声で操作できるというところがポイントですね」と説明する。

人生にトキメキをもたらした

中野さんは、この気づきをTwitterに投稿した。すると、ツイートはあっという間にリツイートが1万6000件を超え、2万4000件を超えるいいねがついた。

「目の不自由な人にもアレクサは便利だと思う」「介護する側もホッとしそう」といったコメントも続いた。

スマートスピーカーは数年前までテック好きの人が使うデバイスとして認識されていたが、介護業界にも役に立つのではないかという中野さんの視点に「スマートスピーカーの使用可能性にこういう切り口があるっていうのが分かるだけでも、私はいい事だなって思う」「実は高齢者にこそ使ってほしいデバイスってあるんだろうな」といった意見もあった。

中野さんは「何よりもアレクサをプレゼントしてから祖母は楽しそうです。 新しいものに触れた時のトキメキって年齢は関係ないと思いました。 アレクサは祖母にトキメキを与えてくれていると思います」と話している。

おばあちゃんのためにアプリも開発

祖母の話し相手をプレゼントしただけでなく、もう一人の祖母のためにアプリの開発も手掛けたという中野さん。

実は、以前祖母のところにオレオレ詐欺の電話がかかってきたことがあった。不幸中の幸いで、祖母が電話の相手が詐欺師であることに気が付いたが、最初は話にのめりこんでしまったという。

その時「オレオレ詐欺などの実際の音声を流すことで防犯に繋がるのではないか」と考えた。

すぐに全国の警察のホームページを調べ、オレオレ詐欺の音声がないかを確認した。すると、中野さんが住んでいる千葉県警が、音声を公開し、内容の文字おこしもしていたことを知った。

中野さんはその場で「音声を使わせてほしい」と千葉県警にアプローチ。学んだプログラミングの知識を生かし、人生で初めてのiOSアプリの製作を始めた。

それが「電話de詐欺シュミレーター」だった。

オレオレ詐欺の電話の内容が音声で流れてくるシミュレーションアプリ

実際の音声を使い、犯人とのやり取りをシミュレーションする。やり取りがとてもリアルで、恐怖感を身をもって感じられる仕組みになっている。

電話での詐欺はオレオレ詐欺のほかに、架空請求をしてくるものや、融資を持ち掛けるふりをするもの、そして「お金が戻ってくる」などと言葉巧みに通帳の番号などを聞き出す「還付金詐欺」など様々な種類がある。

また、このアプリを作る際に参考にした情報の中に「高齢者に対してのみ、その手口や対策を訴えかけるのではなく、家族を含め社会全体にその悲惨な被害の実態を周知していく取組が重要」「高齢者に対する最も有効な啓発手段は、身近な人から得る情報、『パーソナルコミュニケーション』である」という記載も目にした。

中野さんは「まず僕たち若い世代が被害の深刻さを理解して、一緒に対策しないと」と考えた。

アプリ名の頭に#(ハッシュタグ)をつけてタイトルを「#STOP電話de詐欺 -犯人の実音声シミュレーター-」と変え、若い世代にリーチをはかった。音声を聞けばバッジを集められるゲーム性も加えた。SNSでのシェア機能も付けた。

「まず若い人にインストールしてもらい、高齢者と一緒に使ってほしい。どうしても、高齢者自身からアプリを使ってもらうのはスマホを利用する分ハードルが高い。若者から高齢者へのパーソナルコミュニケーションが防犯にとって最も有効だと考えています」という。

現在は学業の傍ら、iOSアプリ開発エンジニアのインターンも始めたという。中野さんは「より多くの方に高齢者とITの問題について知っていただきたいと思っています」と話している。