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なぜ日本人は、つけ込まれるのか? グローバル企業に勝つために知っておくべき「交渉のコツ」

交渉のイメージ写真

私は弁護士人生の大半を日本企業の代理として米国の法廷で戦ってきた。

愛する日本のために貢献することが、私の最も重要なミッションである。

 

交渉は「合意」を目的にしてはならない

 

業務を通じて、また日本に長年住んでいる中で感じるのは、日本人は優しいということだ。

常に相手を思いやり、争いを好まず、穏便にものごとを解決しようとする。これは日本人の美点であり私が日本と日本人を敬愛する理由でもある。しかし、それゆえに交渉で不利益を被っていると感じることは多い。

 

なぜなら、グローバル・ビジネスのプレイヤーたちは、日本人の優しさや思いやりの精神に付け込もうと躍起になってくるからだ。

私は日本人の優しさに付け込もうとする姿勢が気に食わないが、それを指摘したところで、相手は態度を改めたりはしない。

 

だからこそ私は、弁護士として世界中の企業とタフ・ネゴシエーションをしてきた経験をもとに「交渉を有利に進める鉄則」を『交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20の原則』という本にまとめ、日本語で出版することにした。

 

その中でも触れているが、日本のビジネスパースンはまず「交渉とは何か」を知る必要があると感じている。

「オックスフォード英語辞典」で“Negotiation”の項目をそのまま訳すと、「合意に達することを目的に討議すること」となる。

 

しかし、ここにパラドックスがある。

確かに交渉とは合意を目指して行われるものであるが、「合意」を最終的な目的にしてしまった者が、交渉において不利になってしまうのだ。これは当然のことで、相手が全く譲歩をしなかった場合、合意をするためには自分が譲歩するしかなくなるからだ。

その結果、相手にとって一方的に都合よく、こちらにとって不本意な合意に至るのであれば、交渉をする意味は失われる。

 

だから、私は交渉を「自分の目的を達成するための手段」として定義している。

そもそも私たちが交渉をするのは、何らかの実現したい目的があるからだ。

例えば、家賃の交渉は安くて好立地な賃貸物件に住むためであり、営業マンの売買交渉はより高い値段で買ってもらうためである。

その目的を達成するために、相手と行う利害調整が交渉なのだ。

 

つまり、交渉の目的は「合意すること」ではなく、あくまでも「自分の目的」を達成することでなければならないのだ。

当たり前のことのようだが、この原点は最も大切なことである。

合意をするために不本意な譲歩・妥協をして、自分の目的を放棄してはならない。

 

「交渉決裂」もひとつのプロセスに

 

自分の目的を放棄せず、目的達成のために臨むのが交渉であると考えれば、「交渉決裂」が重要な意味を持つこともわかっていただけるのではないだろうか。

不本意な譲渡・妥協をしなければ合意できないと明らかになった時には、交渉決裂を突きつけてもいいのだ。交渉決裂は必ずしも交渉の終わりではなく、そこから新たな展開が生まれることもある。交渉決裂も、交渉プロセスの1つになるのだ。

 

また、自分が弱い立場だからと交渉をあきらめることはない。

こんな話がある。

ある商品を売り込むために、東南アジアにいち早く販路を開拓した日本人事業者がいた。

そのビジネスが軌道に乗り始めると、世界的大資本企業が参入。資金力にものを言わせて、大々的な広告戦略と安値攻勢を仕掛けてきた。

両者のシェア争いは膠着状態が続き、大資本は日本人事業者に合併の打診をする。

ところが、51%以上の株式保有を主張する日本人事業者に対し、大資本は譲らなかったため、交渉は決裂。

ところが、日本人事業者が数年後数年かけて、商品のシェアを少しずつ伸ばした結果、大資本が音をあげた。結局、日本人事業者が「51%の株式」の保有を認め、合意に至ったのである。

彼らは合意目的で交渉についたのではないことがお分かりいただけただろうか。

もちろん、交渉の場では相手の立場に配慮をして、誠実かつ協調的に討議をしなければならない。しかし、目的達成のため、決して戦う姿勢を失ってはならない。

それを失った時、確実に不利な交渉を強いられることになるのだ。

 

日常は交渉の連続である。

企業間の交渉のみならず、社内でも企画を通すための根回しや他部署との連携など様々なシーンで交渉に臨んでおられると推察する。事の大小はあっても、基本的には同じ「交渉」という行為である。今後も、すぐに応用していただけそうな交渉術を提供していきたい。