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「目先の日本株は上値の重い展開が続く可能性も」大和証券 野間口毅氏

2月24日にトランプ大統領はツイッターで、中国との貿易交渉で「構造問題などで十分な進展があった」として、3月2日に予定していた中国製品の関税引き上げを延期すると表明した。また、3月3日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、米中両政府が貿易協議で追加関税の引き下げを議論しており、米国は2018年に課した対中制裁関税のうち一部か全部を取り下げることを検討していると報じた。すると、翌4日の東京株式市場では日経平均が2万1822円の年初来高値を付け、昨年10月2日に付けた高値(2万4270円)から12月25日に付けた安値(1万9155円)までの下落幅の半値戻し(2万1713円)を達成した。

一方、翌5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)で李克強首相は、2019年の経済成長率の目標を「6~6.5%」にすると表明し、2018年の「6.5%前後」から2年ぶりに引き下げた。また、7日には半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、中国での需要減少を背景に国内外13工場で生産停止に踏み切ると報じられた。さらに、翌8日に発表された中国の2月の貿易統計で輸出入が市場予想を大幅に下回ると中国の景気減速懸念が高まった。すると、同日の日経平均は430円安と大発会の1月4日に次ぐ今年2番目の下げ幅で下落し、取引時間中には一時2万1000円を割り込む場面もあった。

目先の米国市場では株高が続くと想定

日本株,見通し
(画像=PIXTA)

FRB(米連邦準備制度理事会)は3月20日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、2019年中の利上げを見送り、9月末で資産縮小も停止する方針を示した。また、22日に発表された3月のドイツ、ユーロ圏、米国の製造業PMI(購買担当者景気指数)が軒並み市場予想に反して低下すると世界経済の減速懸念が強まり、同日のNY債券市場では米10年国債利回りが一時2.41%と約1年3ヵ月ぶりの低水準を付け、FF金利先物価格から計算されるFRBの年内の利下げ確率は60%に達した。

一方、アトランタ連銀の短期経済予測「GDPナウ」によると、米1〜3月期の実質GDP成長率は前期比年率1.2%増と、昨年10〜12月期の2.6%増から大幅に減速すると予想されている。また、調査会社リフィニティブによると、米S&P500社の純利益は1〜3月期に前年同期比1.7%減と2016年4〜6月期以来の減益に転じると予想されている。ただし、目先の米国市場では低金利が続くとの期待に加えて、4〜6月期以降の景気や企業業績も回復するとの期待から株高が続くと想定する。

米中貿易協議の合意期待が続く可能性

中国商務省は3月28~29日に北京で閣僚級の米中貿易協議を開くと発表した。閣僚級協議は2月にワシントンで開いて以来となり、ライトハイザー米USTR代表とムニューシン財務長官が訪中する。

また、ホワイトハウスは中国の劉鶴副首相が4月3日に訪米して閣僚級協議を開くと発表した。米中は2週連続で閣僚協議を開き、貿易協議の合意へ詰めを急ぐ。トランプ大統領が、中国製品にかけた追加関税について「(貿易協議で合意しても)解除することは議論していない」と述べたことには注意が必要だが、目先の日米市場では米中貿易協議の合意期待が続くとみている。

目先の日本株は上値重い展開が続く可能性も

中国の1~2月の経済統計によると、工業生産は前年同期比5.3%増と昨年12月の5.7%増から減速し、リーマン・ショック直後の2009年1~2月以来10年ぶりの低い伸び率となった。半導体や自動車の生産が振るわなかった。また、スーパーや百貨店、インターネット通販などを合計した小売売上高は8.2%増と昨年12月の8.2%増から横ばいにとどまった。春節商戦の伸び率が2005年以降で初の2桁割れとなり、自動車販売も低迷した。

一方、日本の財務省が発表した2月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比1.2%減と1月の8.4%減から減少率が縮小した。また、中国向けの輸出は5.5%増と3ヵ月ぶりに増加に転じた。中華圏の春節など特殊要因もあって17%減少した1月からは好転したが、1~2月の合算では前年同期比6.3%減と減少が続いている。

また、日本工作機械工業会(日工会)が発表した2月の工作機械受注額によると、中国向けの受注額は前年同月比50.4%減と12ヵ月連続で前年割れとなった。米国向けも2ヵ月連続で前年割れ、欧州向けも4ヵ月連続の前年割れと外需の主要3極が軒並み不振となった。日工会の飯村会長(東芝機械会長)は記者会見で「これまでは『(商談が簡単に)決まらなくなった』という話だったが、『プロジェクトが凍結された』という話も聞かれ始めた」と述べ、市況の悪化が顕著になっているとの認識を示した。日本政府は2月の月例経済報告で、設備投資や消費の底堅さを理由に緩やかな景気回復が続いているとの見方を強調し、輸出や生産の落ち込みで景気が後退局面に入っているとの見方を打ち消した。しかし、目先の日本株は中国向けの輸出や工作機械受注の底打ちが確認されるまで上値の重い展開が続く可能性があろう。

野間口毅(のまぐち・つよし)
1988年東京大学大学院工学系研究科修了後、大和証券に入社。アナリスト業務を5年間経験した後、株式ストラテジストに転向。大和総研などを経て現在は大和証券投資情報部に所属。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定証券アナリスト。