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「子連れ旅行」はあそこ。「温泉」はあの場所。7億DLアプリが明かす日本の意外な“伸びしろ”

街を歩いていて、中国語を耳にする機会が増えた、と感じる人も多いのではないだろうか。

政府観光局によると、日本を訪れる外国人は約3119万人と過去最多を記録。その1/4以上を占める約830万人が中国人だ。

この中国人の「旅の情報集め」で存在感を発揮しているのが马蜂窝(マーフォンウォー)」だ。旅行サイトとSNSを組み合わせたようなプラットフォームで、スマホアプリの累計ダウンロード数は7.6億。

マーフォンウォーの公式サイト

マーフォンウォーはこのほど、日本進出を決め東京でイベントを開催。独自に収集したビッグデータから、日本の観光地の意外な“伸び代”を明らかにした。

■体験記が体験記を呼ぶ、独自のエコシステム

マーフォンウォーの強みは、ユーザーから寄せられる口コミの豊富さにある。中国国内はもちろん、世界6万か所の観光地の情報を網羅している。なかでも、日本旅行の体験記は大人気コンテンツだ。

日本にやってくる中国人旅行客といえば、大型の貸切バスに乗り込んで、降りては爆買い...というのが数年前までのイメージだったかもしれない。だが、現在は個人観光ビザを取得しての個人旅行(FIT)が特に若者の間で主流となっている。

中国人観光客(イメージ)

個人観光の場合、自由に旅程をアレンジできる。つまり、旅行前の情報収集がキモとなるわけだが、マーフォンウォーはその需要に答える設計となっている。

マーフォンウォーのサイトやアプリでは、自らの旅行体験記をブログのような形式で掲載することができる。内容は、どんな飛行機を使ったかや、泊まったホテルの感想、それにふらっと買い食いした店の情報など細部にまで及び、写真も大量に載せられる。

旅行記を載せると、それを見たユーザーから「いいね」が寄せられ、Twitterのようにフォロワーも増えていく。ツイートの代わりに口コミや体験記を投稿するようなイメージだ。

こうした体験記を参考に、自分が現地へ旅行した姿を想像し、旅行先を決めるというのが基本的な流れだ。そして、旅行を終えると、今度は自分が体験記を寄稿し、また別の人がそれを見て...と情報が連鎖していく独自の生態系を作り上げている。

ユーザーの心をくすぐる工夫もある。

掲載した体験記の内容や写真、それに動画のクオリティなどがマーフォンウォー側から認められると「達人」という称号が与えられる。

「達人」はマーフォンウォー内ではステータス。自分の体験記を見てくれるファンが増える上、特定の遊園地や景勝地の回り方などを細かく解説した「攻略」というコンテンツを作成できるようになる。

旅行の体験記を通じて、誰もがマーフォンウォー内でのインフルエンサーを目指せる。このシステムが奏功し、体験記や攻略は毎月70万件以上投稿されるようになっている。

■コンテンツから即、消費へ

マーフォンウォーの刘婷婷(りゅう・ていてい)営業総監はこのスタイルが「中国人独自の旅行スタイルにマッチしている」と解説する。

刘婷婷(りゅう・ていてい)営業総監

マーフォンウォーが収集したデータによると、例えば日本に行こうと思った場合、情報収集を始めるのは出発日の40日前。他のユーザーの体験記や「攻略」を読み込み始める。具体的な行き先や、「日本で何をするか」を決めるのは30日前だ。

このように、ゆっくりと時間をかけて旅行へのイメージを膨らませる傾向が強いという。

マーフォンウォーは、ユーザーが興味を持ったコンテンツをデータとして集積し、航空券やホテル、それに旅行グッズを勧める。

旅行前の情報収集から、実際の旅行の準備までを、全てマーフォンウォー上で行わせる戦略。「膨大なデータを元に、コンテンツと消費の距離を縮めることができる(刘氏)」のが最大の強みだ。

■検索ワードから見る「伸びる観光地」

マーフォンウォーが日本進出を決めた背景には、観光の目的地としての日本が、これからさらに伸びるという期待がある。

マーフォンウォーの分析によると、東京オリンピックを迎える2020年は、体験記や攻略などの日本情報に対する需要が11倍になると予想される。

データをもとに解説する担当者

さらに成長の余地を残すのが地方だ。

サイト内では東京や大阪、京都に関する情報が突出して多い。一方でユーザーの検索ワードを分析すると、違う場所に興味が集まり出している。

例えば、夏の旅行シーズンならば軽井沢(長野県)。温泉ならば従来の箱根や伊豆に隠れて熊本が注目を帯びている。そのほか、熱海(静岡)や富良野(北海道)が中国人のホットワード。誰もが知っている東京・大阪ではなく、違った日本らしさを求める旅行者が多い。

意外なのは「子連れ旅行」では名古屋が注目を集めていることだ。担当者によると、水族館など子供が喜ぶ施設があるうえ、東京や大阪に比べ「行列しなくても済む」という情報が口コミで出回っているためだという。

日本ではウェブマーケティングなどを扱う東京の企業が代理店となる。日本の百貨店や観光地、それに自治体などは代理店を通じてマーフォンウォーのユーザーに向けて広告を出せるようになる。

売り出し方はバラエティに富んでいる。「達人」に記事を書いてもらい拡散させるほか、マーフォンウォー側にユーザーの目に触れやすい場所に掲出してもらうなどだ。

この日のイベントで、代理店との協定調印式に臨んだマーフォンウォーの于卓(う・たく)高級副総裁「この日を迎えられて感激している。今日は、マーフォンウォーだけでなく、数億の中国の消費者も一緒に日本にやって来たと思ってほしい。日本の企業や自治体は、このチャンスを逃さずに潜在的な観光客をぜひ掘り起こしてほしい」と呼びかけた。

鏡開きで協定調印を祝う。于卓・高級副総裁(左)