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「俺について来い」と言っても誰も着いてこない明確なワケ

(本記事は、桑田純一郎氏の著書『こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である』あさ出版、2018年11月27日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

ビジョンを語り、方向性を示す

こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

●先を読み、明確な方向性を示す

「経営者の仕事でいちばん大切なことは何ですか?」

そう聞かれると、私は次の二つだと即答しています。

ひとつは、「時代の流れを読み、経営の方向性を示すこと」。

もうひとつは、「職員全員が、ここに勤めてよかったと思えるような会社にすること」です。

こうした考えは、先代の父から受け継いできた理念を私なりに深化させてきたものです。

方向性について、なかには、変化の激しい時代にあって、不確実な未来を予測することは不可能。だからビジョンを語ったり、企業が目指す姿を中長期計画のような形で明文化することはできない──、といった考えの方もあるようです。

たしかに、いまは「未来」が見えにくい時代ではあります。

しかし、「わからない」からといって、経営者がビジョンを語らなければ、また中期、長期にわたる計画や方向性を示さなければ、社員たちはどこに向かえばいいのかわからず迷走してしまいます。

私はこう考えています。

予測不可能な時代だからこそ、経営者は必死になっていまという時代をつかみ、未来を見通す力を身につけなければいけないと。

不確実なことばかりの世の中で、「先を読む」ことがいかにむずかしいか、経営者のみなさんは痛感されていると思います。だからこそ、意識的に、この先、自分たちのおかれたビジネス環境がどう変化していくか、その流れを読み取るための時間をつくるべきです。

私自身は、経営者向けの勉強会や、有識者の方の講演など、とにかく気になるテーマがあれば、東京でもどこでも出かけて話を聞くようにしています。

多業種の経営者、政治家、大学教授、科学者、ジャーナリスト……直接、経営には関係ないことでも、先を読み取るためには幅広く知識を吸収することが大事です。

問題意識を持って聞いていると、必ず自分たちの経営に参考になることが含まれています。

たとえば、信用金庫は突き詰めればサービス業です。お客さまがどのようなサービスを信用金庫に求めているかを探り、ニーズに合ったものを提供することは、絶対不可欠なことです。

しかし、顧客ニーズというものはわかりやすく形に表れているものだけではありません。形や言葉になっていないけれど、潜在意識のなかにあるものもあります。

そうした、人がまだ気づいていない「あったらいいな」「こういうものが欲しかった」をいち早く見つけ、自社の商品やサービスに結びつける。経営者には、こうした先見性が絶対的に必要です。

誰もが先が読めない時代だからこそ、感覚を研ぎ澄ませ、世の中の流れ、人々の気分の変化に敏感でなければなりません。

そして、そうするなかでキャッチした「変化の兆し」や「予測される流れ」を自社の方針や中長期計画のなかにどう組み込むかを考え、方向性を明確に示す──。

それが、経営者が果たすべき大きな仕事のひとつなのです。

●一度ではなく、繰り返し語り続ける

経営者が方向性を示すのは、年度の始まりなど1年に1度とか、半期に1度でいいという方もあるでしょう。

ただ私は、そうした節目節目はもちろんのこと、日常的に、社員と接する機会をできるだけ多く持つように心がけ、ことあるごとに語り続けています。

人間は自分が強く関心のあることであれば覚えられますが、そうでない事柄についてはすぐに忘れてしまいます。次から次へと情報の洪水が押し寄せてくる現代ですから、仕方がありません。

経営理念も経営計画も、社是なども伝える努力をしなければ、みんな忘れてしまいます。

忘れられて当たり前。その前提に立ち、経営者がすべきなのは、全社員の意識に浸透するように、機会あるごとに繰り返し繰り返し語ることです。それも、心の芯に届くように、熱を込めて、企業としてどうあるべきかの方向性を自らの想いとともに語り続けなければなりません。

当金庫であれば、我々は地域のみなさまの「よろず相談信用金庫」を目指しているのだと。お客さまの困りごと、地域の困りごとを手助けすることで、「地域になくてはならない金融機関」であることを使命としているのだとビジョンを語る。

目先の利益にとらわらず、人に喜ばれることを続けていけば、必ず共感してくださる方が増え、当金庫を選んでお客さまが増え、預金が増え、貸出金が増え、そして放っておいても利益は上がってくるようになる。

だから、決して「短期の利益を追い求めてはならない」ということも繰り返し述べています。

●リーダーには説明責任がある

とにかく、しつこいぐらいに、社員に向かって自分の想いを語っています。

入寮している独身男性社員たちと一緒に食事をしながら語る。休日、社員たちとバーベキューやゴルフを楽しみながら、そこでも語る。一緒にお酒を飲んで、また語る……。

このように、但陽ファミリーの温かなふれあいを大切にしながら、社員のみんなと経営者のビジョン、企業の使命、方向性というものを浸透させていくのです。

スローガンのように掲げるだけでは伝わりません。

「何が大切か」
「なぜ大切か」

その意味を、重要性を、わかりやすく説明する責任(アカウンタビリティー)が経営者にはあるのです。

「おれについてこい」とか「わが社の方針はこうだから、社員はこれに従いなさい」では人はついてきません。

給料をもらっている手前、「右を向け」と言えば、右を向かせることはできるでしょう。しかし、意欲などわいてきません。ただ、命令されるからやるだけの機械人間になってしまいます。

やはり、なぜそうしなければならないのか、なぜそれが重要なのかを自分のなかで消化し、納得、共感して初めて、よし頑張ろうと思えるもの。

人がやる気や情熱を持って、仕事に打ち込める状況を整えるのはリーダーの使命です。

そのためにも、相手が納得するまで、何度でも繰り返し語り続けなければならないのです。

こんな時代だからこそ、やっぱり会社は家族である
桑田純一郎(くわた・じゅんいちろう)
昭和47年、日本大学経済学部卒業。同年、但陽信用金庫入庫。平成2年より理事長。NPO法人但陽ボランティアセンター理事長、更生保護法人兵庫県更生保護協会副理事長、公益財団法人近畿警察官友の会兵庫県支部長、加古川商工会議所相談役、日本遺産「銀の馬車道・鉱石の道」推進協議会副会長、兵庫県日赤有功会副会長(会長代行)。

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