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「仮想通貨界のクジラ」が語るシンガポール生活の不満は?

日本の株式市場には「クジラ」と呼ばれる存在がある。私達の公的年金を管理するGPIFや海外の政府系ファンドなどを指すことが多い。近年注目度が増す「暗号資産(仮想通貨)」の世界においてもクジラたちは活躍しているのだろうか。

仮想通貨市場のクジラたちはシンガポールを目指す

シンガポール,仮想通貨
(画像=Willyam Bradberry/Shutterstock.com)

一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が平成30年4月10日に発表した資料によると、グローバルで見たビットコインの利用者数(ウォレット数)は約2400万もあるという。しかし、取引量の85%は、たった1000ほどの口座で占められているという話も聞く。

筆者が知る3人の仮想通貨投資家も、もしかしたらその1000人に入っているのかもしれない。彼らは大量の仮想通貨を保有しており、含み益はすでに数十億円に達している。そんなクジラたちは皆、キャピタルゲイン課税を逃れるためにシンガポールに移住してしまった。彼らは今も売却のタイミングを虎視眈々と狙っているようだ。

ビリオネアのシンガポール生活の憂鬱

その1人であるX氏は、奥さんと子供を連れてシンガポールへ移住した。当初、X氏はシンガポールでの生活を胸を待ちわびていたという。「シンガポールはお金持ちの国。街もクリーンで高級コンドミニアムは快適だろう」と。

だが実際に住んでみて、彼はあっという間にシンガポールでの生活に嫌気がさしてしまったそうだ。確かに周囲はお金持ちだらけだが、異国の地で孤独を感じているのだという。X氏が住むコンドミニアムの周辺にはマリーナ・ベイ・サンズがあり、活気のある声が届く分、取り残されたような感覚が拭えない。

また、外食代も高くつく。数十億の含み益を持っているとはいえ、筋金入りの投資家のX氏にとっては、コストに見合わない食事はパフォーマンスの悪い投資をさせられているようで、納得がいかないのだという。高くても美味しければ良いのだが、日本での食事と異なり、口に合わないので食の満足感もないそうだ。

お金でも買えない異文化の差異

X氏は間違いなくお金持ちである。世の中には「ほとんどのことはお金で解決できる」と言う人もいる。だが、実際に大金を手にしたX氏はシンガポールでの生活で次々と「お金で解決できない問題」に直面することになった。

先に述べた食事、仲間はもちろん、虫が多いこと、高温多湿で過ごしにくい、シンガポールの英語(シングリッシュ)が分かりづらい、娯楽がないなど海外ならではのどうしようもない問題があるという。これらはどれだけお金をつもうが解決できない問題だ。

決してシンガポールを否定しているわけではない。むしろ街が綺麗で水道も飲めるシンガポールは、どちらかいうと日本人に合いやすい地域と言えるかもしれない。しかし、含み益数十億円のビリオネアX氏にとっては、異文化の壁は高かった。「お金で買えないものはない」という人にこそ知ってもらいたいX氏の体験談である。

投資家も帰巣本能には勝てない

かつて、諸外国の出稼ぎ労働者が次々と集団ホームシックにかかった事が話題になった。故郷への憧れ、同郷への想いを強く掻き立てられ、最後は合理的思考を曲げて帰郷を促すホームシックはウイルスによる病気と信じていた人もいたという。

X氏も血の通った人間だ。彼も日々、日本への帰郷を渇望する思いが強くなっているのを感じるのだという。「帰巣性」という原始的な感情が、合理的で冷静な思考を歪曲してしまうのだ。「一日も早く利確して快適な日本に腰を下ろしたい」酒を飲みながらそうぼやくX氏の顔には疲労が見え、ビリオネアならではの苦労もあることを感じた。(黒坂岳央、高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)